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» 2012年09月12日 08時00分 公開

アニメビジネスの今:アメコミ市場は日本の10分の1、世界のマンガ市場を見る(後編) (2/3)

[増田弘道,Business Media 誠]

米国のコミック流通事情

 北米コミック市場を取り仕切る独占的なマスター・ディストリビューター(総合取次会社)なのが、ダイアモンドコミック・ディストリビューション。次表がその2011年北米コミック小売市場シェアだが、マーベルが37.3%、DCコミックが31.4%、その他9社が31.3%。米国コミック市場では昔からこのようなマーベルとDCコミックの寡占状況が続いている。

2011年アメコミ出版社のシェア(出典:ダイアモンドコミック・ディストリビューション社Webサイト

  出版社 小売市場
1 MARVEL COMICS 37.29%
2 DC COMICS 31.41%
3 IMAGE COMICS 5.27%
4 IDW PUBLISHING 4.73%
5 DARK HORSE COMICS 4.71%
6 DYNAMITE ENTERTAINMENT 3.06%
7 BOOM! STUDIOS 1.73%
8 VIZ MEDIA 1.09%
9 EAGLEMOSS PUBLICATIONS LTD 0.96%
10 AVATAR PRESS INC 0.79%
11 OTHER NON-TOP 10 8.95%

 今回調べてみて意外だったのは、アメコミ市場の規模が予想外に小さかったということだ。アメコミにはいくつかの黄金時代があったが、恐らくその頂点は新シリーズの『X-MEN』創刊号が800万部売れた1991年ごろ。投機目的でもコミックが買われた1990年代前後は、いわゆるバブル的な状況であった。

 しかし、その状況は長く続かず、1990年代後半になって急激に市場が縮小、『X-MEN』も刷部数15万部という状況になり、そのため1989年に上場したマーベルは1996年には破産状態に追い込まれ、会社更生法申請を余儀なくされた。DCコミックは1969年からワーナー・ブラザーズの傘下にあったため危機を免れたが、いずれにせよアメコミ市場はもとに戻ってしまった。

 その後、マーベルはオーナーが変わり、キャラクター商品販売に直結する映像ビジネスに力を入れるようになった。今年公開され歴代北米興行収入3位となった『アベンジャーズ』や同じく今夏公開のヒット作品『スパイダーマン』、さらに『X-メン』『超人ハルク』『ファンタスティック・フォー』などの製作を積極的に行ったため、映画関連の収入やライセンス・玩具ビジネスの売り上げが大幅に伸びて復活は遂げたものの、コミック部門は伸び悩んだままなのである。

 そのマーベルの決算を示したのが次表である。2009年にディズニーに買収されたため、2008年までの決算しか公開されていないが、2008年の売り上げは6億7620万ドル、当時の為替レート(1ドル=92円)で計算すると約622億円となる。

マーベルコミックス2006〜2008年度売上(出典・マーベル・コミック決算書)

項目 2008年 2007年 2006年
Licensing(ライセンス) 2億9280万ドル 2億7270万ドル 1億2720万ドル
Publishing (出版) 1億2540万ドル 1億2570万ドル 1億850万ドル
Toys(玩具) - 8740万ドル 1億1610万ドル
Film Production(映画製作) 2億5460万ドル - -
ALL Other(その他) 340万ドル - -
Total 6億7620万ドル 4億8580万ドル 3億5180万ドル

 そこそこの売り上げがあると思われるかもしれないが、次図を見ると分かるように、出版売上はその18.5%に当たる1億2540万ドル(115億円)に過ぎない。

マーベル・コミック2008年度部門別売上(出典:マーベルコミックス決算書)

 最初この数字を見た時、筆者は何かの間違いではないかと思った。ダイアモンドコミック・ディストリビューションの2008年出版社別小売市場シェアを見ると、マーベルは40.8%でトップ。シェア40.8%で115億円なら、市場全体では281億円になる。

 もちろん、ダイアモンドコミック・ディストリビューションが北米の全てのコミック売上を担っているわけではない。しかし、同社が毎年発表している北米のコミック市場売上をみると、2008年は4億3660万ドル、当時の為替レートで402億円とそこまで大きくならない。

 一方、日本の2008年のマンガ市場(コミック誌+コミックス売り上げ)は4483億円。アメコミ市場は日本のマンガ市場の11分の1という規模となる。実際はアメコミ市場の中に日本のマンガの売り上げも含まれているので(逆も多少あるが)、純粋な米国製コミックの数字はもっと低くなるのだが、それにしてもあまりにサイズが小さくて、「本当かな?」と思ってしまう。

 実は米国では長年に渡り、出版統計の中にコミックという項目はなかった。『出版年鑑』によると「全書籍の分野別出版点数」以下の統計にコミックを含む「グラフィック・ノベル」の統計が現れたのは2009年版からで、突如2004年からのデータが記載されるようになった。現在では「コミック等」という項目になっているが、つまり項目を設けるほどのレベルになかったということなのだ。改めて日本がマンガ大国であることが浮き彫りになったと言えるだろう。

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