ヤミ金被害は、本当に減っているのか?新連載・「弱者」はなぜ救われないのか(3/4 ページ)

» 2012年09月14日 08時00分 公開
[増原義剛,Business Media 誠]

 ところが、このような改正貸金業法の効果をアピールする政府の発表に対して疑義を唱える向きがある。超党派の国会議員でつくる「改正貸金業法の影響と対策についての勉強会」メンバーらが金融庁のアンケートを取り寄せ、その内容を精査したところ、前述の統計のなかにまったく整合性がとれない部分があることが判明した。

 ヤミ金利用者の割合が3.0%と出た2010年3月のアンケートの時には、金融庁は対象者に対して「過去3年間」でのヤミ金利用の有無を尋ねていた。ところが、2.1%という一見少ない結果が出た2011年4月のアンケートでは、金融庁は「改正貸金業法施行後」でのヤミ金利用を尋ねている。完全施行は2010年6月であったことから、同じような問いの対象期間を3年からわずか10カ月に短縮したということになる。3年で3.0%と10カ月で2.1%。それだけ質問の対象期間が違っていることを明らかにせず、0.9%減ったという部分のみを取り出して「法改正でヤミ金利用者は減少した」とする金融庁のアピールについて、「もし資料を取り寄せなかったら誰もわからなかった」と超党派勉強会のメンバーでもある自民党の平将明議員は国会の委員会質問の場で指摘している。

 この指摘によれば、さらに深刻な事態も明らかになっている。金融庁は改正貸金業法の完全施行から5カ月後の2010年11月にも同様の調査をしており、「改正貸金業法施行後」のヤミ金利用者は当時0.3%という結果であった。それからわずか5カ月の間に、1.8%も増加して2.1%になったことになる。

 この「ヤミ金の闇」の昨今の実態を示す統計や証言は他にいくつもある。

 1つは、大阪府商工労働部が改正貸金業法の完全施行から1年以上を経た2011年9月に府民約3700人を対象として行った「消費者金融利用者調査等にかかる調査」である。

 その調査結果速報には、かつて消費者金融利用した経験のある人でヤミ金を利用している人の数値が出ている。

 2009年の調査で0.74%であったヤミ金利用者の割合は、2011年の調査では1.24%に増加しているのだ。つまり、1000人中7.4人だった利用者が12.4人に増えている。また、利用者の意識の面でも、2009年は「困った時には利用したい」と「最後の借入先として利用する可能性がある」を併せたヤミ金利用肯定者の割合は9.6%であったのが、2011年では12.2%まで増加しており、何らかのきっかけでその必要が生じてしまった場合にはヤミ金を利用しかねない人の割合が高まってきているのだ。

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