ヤミ金被害は、本当に減っているのか?新連載・「弱者」はなぜ救われないのか(2/4 ページ)

» 2012年09月14日 08時00分 公開
[増原義剛,Business Media 誠]

「後門の狼」――最高裁判決が招いたとんでもない事態

 2006年1月13日「シティズ判決」で、それまで「グレーゾーン金利」での貸し付けを認めていた貸金業規制法の「見なし弁済規定」が実質的に否定された。これにより、すでに完済し終わっているケースまで含めて、過払い金返還請求が全国各地の弁護士・司法書士によって盛んに行われることになった。

 当時、過払い金返還請求の流れがここまで大きくなることについて、我々議員の誰も予測することができなかったことは言うまでもない。完済者とは、繰りかえしになるが、いわば健全にノンバンクを利用して有効に経済活動を行っていた利用者である。ノンバンクが立派に機能を果たした証左であり、当初の狙いである「多重債務者」とはまったく関係ない彼らまでもが過払い金返還を求めることは、経済にマネーを供給するノンバンク金融の趣旨をないがしろにする状況であるとさえ思っている。

 「後門の狼」がこれほどのマグニチュードを持つと分かっていたならば、立法の段階で「完済者は過払い金返還の対象から除外する」という規定をいれておけば良かったと思うが、それは後の祭りであった。

本当にヤミ金被害は減っているのか?

 改正貸金業法の完全施行から1年が経った2011年6月、金融庁は「法改正で多重債務者は減少し、ヤミ金対策にもその効果を上げている」という趣旨の会見を行った。その時の発表によれば、「ヤミ金利用者」の割合は法改正前にあたる2010年3月に3.0%であったものが、法改正後の2011年4月には2.1%に減ったという。

 また、別に警察庁が2011年6月に公表した「ヤミ金事犯の現状について」という資料では、ヤミ金被害は、2007年のヤミ金検挙事件数484件、検挙人員995人、被害人員14万8543人、被害金額303億8998万円をピークに、年々減り続けているとしている。特に、改正貸金業法の完全施行直前にあたる2009年には検挙事件数442件、検挙人員815人、被害人員9万4211人、被害総額198億3095万円であったものが、完全施行後の2011年には検挙事件数366件とさらに減り、同様に検挙人員666人、被害人員5万334人、被害総額117億5516万円と法改正後に軒並み減少した。

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