アメリカ政府はウソをついているのか ビンラディン殺害の真実伊吹太歩の世界の歩き方(2/4 ページ)

» 2012年09月20日 08時00分 公開
[伊吹太歩,Business Media 誠]

 いずれにせよ今回の暴露本は、それほどまでにセンシティブなものだ。米国防総省のジェー・ジョンソン主席法律顧問は、著者の隊員は守秘義務契約に署名しており、今回の出版に対して法的措置も辞さないと表明している。さらに、国防総省は本にどこまでの機密情報が含まれているのか、またそれを公表してもいいのかをチエックして編集するために出版前に内容を確認しているが、この隊員がその約束を守っていないとも指摘している。

 米政府にしてみれば、こうした違反や暴露は看過できない。例えば、米国の外交機密 電文をネットで公表し、現在は在英エクアドル大使館に逃げ込んでいるウィキリークスの創設 者ジュリアン・アサンジに対して、米国は現在も身柄の拘束を目指している(関連記事)。マーク・オーエンを不問にするのは、情報の入手方法は大きく違えどダブルスタンダードになるし、今後の米軍や政府の活動にも悪い影響をもたらしかねない。

何が暴露されているのか

 さてその『ノー・イージーデイ』だが、いったい何が暴露されているのか。オーエンの本に描かれたビンラディン殺害作戦は、殺害以降にバラク・オバマ大統領の政権側から漏れてきた情報と明らかな矛盾が存在している。

 オバマ政権によれば、シールズがパキスタン北部アボタバードの家に突入し、3階のビンラディンのいた部屋に入ると、ビンラディンが武器で反撃しようとしたために銃殺した。しかしその場にいたオーエンによれば、真っ暗の邸宅の中で、暗視ゴーグルを装着した隊員が、あるドアから顔を出して辺りをうかがう人物を見つけたために銃撃した。そしてその部屋に入ると、男性が側頭部を撃たれ血を流して倒れており、その側には女性が2人いた。隊員の1人が女性を男性から引き離して、オーエンとほかの隊員はとどめを刺すために数発の銃弾を打ち込んだ。

 その時にその男性がビンラディンだと分かったのかという質問に、オーエンは「いや、分からなかった」と答えている。ビンラディン殺害作戦前に、実は米政府は、突入する予定の邸宅に、ビンラディンが暮らしているという100%の確証を持っていなかったのだ。だが襲撃にゴーサインを出した。

 さらにオバマ政権の公式発表とは違い、ビンラディンは一切武装していなかったと、オーエンは証言する。

 またオバマは、ビンラディンの遺体は敬意を払いながら扱い、処分したと話している。だがオーエンによれば、ヘリでプラスチックバッグに入れられた遺体を運ぶ際には、シールズの隊員が、ビンラディンの遺体の上(胸部あたり)に座っていたと明らかにしている。これが事実であれば、敬意どころではない。

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