「スキルを示しても無駄」な時代? 中年転職者の悲哀サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(2/3 ページ)

» 2012年09月24日 08時00分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]

 社内で盤石の状態を築いている人の能力であれば、ケースバイケースとは言え(仕事の能力的な部分は低くても、社内政治が得意、といったケースもあるでしょう)、見るべきものがあります。少なくとも、今いる企業では、「その人は求められている」と言えるわけです。

 しかし、首元が涼しくなっている状態の人が持っている能力は、少なくともその企業では求められなくなっているということになります。考えてみれば当たり前のこと。ですから、自分の能力が求められる場所に移るという選択肢を取らざるを得なくなるのです。以前は、一歩先に進んでいた企業を退職した、という人の持っている能力を高く評価し、迎え入れたいと思っていた企業は少なくありませんでした。しかし今は、風向きがちょっと変わってきています。

よその企業が不要だと思った人は、ウチも不要

 転職者を取り巻く環境がどのように変化してきたのか。端的に言うと「よその企業が不要だと思った人は、ウチも不要」という感じでしょうか。「厳しいビジネス社会なのだから、仕事ができる人を企業は手放したりしないはず。手放された人には、それなりの理由があるのではないか」。そう考える採用担当者が増えているのです。

 事実、企業が中途採用市場において求める人材は「転職希望者として、採用市場に出てきていない人」になってきています。転職意欲がなくても、「現在よそで大活躍している人なら、ウチに欲しいです」という企業が多くなっているのです。そのことについては、別に不思議でも何でもありませんよね。自分が採用する立場になって考えてみれば、「確かに、よその会社をお払い箱になった人を採りたいという考えはないな」と分かるはず。見方によっては「ないものねだり」をしているようにも感じるのですが、これは判断の分かれるところでしょう。

 さて、ここからが問題です。今の会社で居場所がないと察知し、転職を視野に入れて活動を始めようとして、職務経歴書を作り、自分ができることやスキルなどを可視化してみると、当然「今までの経験を生かした職に就きたい」と考えるようになります。

 これを読んで「そんなの当然じゃないか! そのための職務経歴書だろう!」と思った方が多いのではないでしょうか。当たり前のことを書いてどうするのだ、とお叱りを受けそうですが、そこにフシギがあるのです。

やりたいことがある人は再就職不可能な時代?

 自分の経験やできること、スキルを可視化すると、「それを生かした仕事に就くべきだ」と人は考えてしまうのです。そして、そういう自分の特徴が発揮できそうな仕事を探しに行きます。そんなことは当然だろうと行動を起こしてしまうと、そこで行き詰まってしまうのですね。

 あるキャリアコンサルタントは「一定の年齢以上の方の転職を支援している時に、仕事が決まりにくい人に多いのは『自分はこの仕事がしたい』と思い込んでいるケースです。『これができる=それしかできない』ではないのですが、そう勘違いしがち。だから、自分がやりたい仕事にこだわりすぎてしまって、結果としてどこにも決まらないという事態になります」と、フシギの正体を明らかにしてくれました。そう、たとえ勘違いだとしても『やりたいことがあるが故に再就職ができない』という事態を引き起こしてしまうのです。

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