鉄道、映画、お金の関係を考える――『旅の贈りもの』制作者インタビュー(後編)杉山淳一の時事日想(4/8 ページ)

» 2012年10月26日 08時55分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]
2011年に公開された『星守る犬』(東宝)

竹山:2011年に公開した『星守る犬』は、会社をクビになって、奥さんから離婚された中年男(西田敏行)が愛犬と理想郷を探して旅をするって話なんです。原作は東京から西の和歌山へ行く話なんですけど、映画では北へ行きました。撮影の時期が真夏だった関係で、ドッグトレーナーに相談すると、「暑いと犬は舌を出しっぱなしで表情が撮れないので、北へ行ってもらえませんか?」って……。

杉山:犬の都合だったんですか?

竹山:『星守る犬』は犬も主人公の一人ですから!

杉山:映画と小説は別物なんですね!

竹山:そうです。いわき、東松島 石巻 遠野 弘前 石狩 名寄、広域的にやるとみんな興味を持ってくれる。それがロードムービーの良さなんです。去年の3月に完成して、東京現像所で試写を見ているときに東日本大震災があって、すぐにロケでお世話になった各所に連絡をしましたが、電話はつながりませんでした。2〜3週間経ったある日、ようやく皆さんと連絡が取れお話をしたところ、東北地方のロケ地は全て地震(津波)の被害を受けていました。そこで、俳優さんとスタッフとで数百万円の義援金を集め、ロケ地で被災した人に配ったんです。

杉山:恩返しですね。

竹山:これが映画人ができるひとつの手段だと思うんです。ロケのやりっ放しではなくて、継続的にロケ地とお付き合いしていく。だって、5年後、10年後に、またお世話になるかもしれませんしね。プロデューサーはそこをちゃんとしないと、自分で自分の首を絞めてしまいますし。

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