1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。
連日のように報道されているものの、いまだに多くが謎に包まれている「尼崎連続変死事件」。関係者から証言される残忍極まりない手口と増え続ける死者に背筋が凍りつく一方で、ぶっちゃけ何が何だかよく分からないという人も多いのではないか。
その原因は、複雑に入り組んだ人間関係だ。
ワイドショーやら週刊誌では人物相関図を作って解説をしているが、「戸籍上の親戚」だとか、「韓国籍の息子」だとか、「義理の娘の実家」だとかがバンバン登場し、いったい誰が被害者なのか加害者なのか余計にこんがらがってしまう。
「そもそも、何でこんな酷い話を警察は放っておいたわけ?」、というより「何で尼崎から遠く離れた平和な家庭に、いきなり怖いオバさんが押しかけてくるの?」……なんて疑問が次から次へと浮かんでくる人のため、この事件を理解するためのキーワードをお教えしよう。それは、「戸籍ロンダリング」だ。
人もバンバン殺しているし、角田美代子容疑者やその周辺にいる人物の人間性には底知れぬ異様さを感じるが、彼らがやろうとしていたことは、暴力団や闇ビジネスをしている人たちがわりとよくやるオーソドックスなもので、とどのつまりは「養子縁組の悪用」である。
養子縁組というのはいわば「名前を変えられる(=偽造免許などではなく、戸籍に掲載される本名を変えられる)」ということ。つまり、ホームレスの戸籍を買ったりなんてことよりも手軽に人生をリニューアルできるわけだ。
李正則受刑者や角田三枝子被告と養子縁組を利用して「家族」となり、それぞれをアカの他人の家へともぐりこませる。角田美代子容疑者は戸籍上は「親戚」になるので、我がモノ顔で乗り込むことが可能となる。さらに、親戚内でのモメごとは、警察は基本的に不介入。やりたい放題で、カネをむしりとったり、脅迫できるというわけだ。
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