おせっかいな「規制」は、人を幸せにするのか窪田順生の時事日想(2/3 ページ)

» 2012年11月27日 08時25分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

人類の進化を止めた原因

 そんな「規制」というのはもちろん健康食品だけではない。例えば、借金するのは年収の3分の1までとか規制している貸金業法改正なんかもこれにあたるのだが(関連記事)、個人的にはこれらの「規制」のなかには、大きなお世話というのも多い気がしている。

 怪しげなものを食べると腹を壊すとか、どれぐらい借金をしたら破滅するとか、そういう大事なことを人は自分で判断をしていた。しかし「規制」によって国がルールを定めると、判断をしなくなる。これがマズい。人間というのは、考えることをやめると、たいがいおかしなことを言い始めるからだ。

 例えば、消費者庁がちょっと前、健康器具を使用した40〜60歳からこんな「危害等」が報告された、と深刻な顔をして発表した。

 「鉄アレイを足に落とした」

 「自宅に置いてある自転車型器具に足をはさんだ」

 「ばねの反動を利用して腹筋を鍛える器具を使用中、反動によりバランスを崩して顔面を強打し、けがをした」

 こういう事態は説明書なんかの「表示」が不十分だから引き起こされたのではないかと分析している。要するに「鉄アレイは足に落ちるかもしれないので、女性やお年寄りはお気をつけください」とちゃんと書いておけ、というわけだ。「規制」をかけられる以前の日本人たちは「年甲斐もなく」という言葉の意味を知っていたので、年齢にふさわしくない愚かな行為をしてしまった時はまず自分を恥じたものだが、「規制」によって正義は我にありとしつけられた人々は、まず相手に非があるはずだと思い込む。

 こういう「弱者を限りなく甘やかす社会」ってどうなのかしらと思っていたら、スタンフォード大学のクラブツリー研究所の遺伝学者Gerald “Jerry” Crabtree教授が、「人間の知性は2000〜6000年前にピークを迎えており、その後人類の知的、感情的な能力は徐々に衰えている」という研究結果を発表した。

 それによると、人間は狩猟採集社会として生きてきた時代に進化の99%が終了しているそうで、脳の大きさの変化で明らかだという。歴史の中で農業や都市が発明され、命が脅かされるリスクが減ったことで、知能の低い人間が淘汰される機会が減ったことが、人類の進化(脳の拡大)を止めた原因だという。

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