ただし、上限運賃そのものを上げる場合は審査が行われる。その結果、「鉄道会社の経営に必要なコスト」と「適正な利潤」を加えた「総括原価」をもとに上限運賃が認められる。この場合、鉄道会社が「経営に必要なコスト」の見積もりを大きくすると適正価格にならない。経費を湯水のように使う会社は運賃が高くなってしまうわけだ。公共交通を担う会社であるから、監督庁としては、鉄道会社の言い値のコストを認めるわけにはいかない。
そこで、同業種、同規模の会社の経費をもとに基準コストを算定する「ヤードスティック方式」を採用している。上限運賃改定の審査では、その会社の「総括原価」が基準コストを越えた場合は、越えた分を認めない。逆に、「総括原価」が基準コストより少ない場合は、「総括原価」と基準コストの差額の半分が上乗せされる。ボーナスポイントである。
つまり、コスト削減の努力ができている会社ほど、利益率の高い上限運賃が認められる仕組みである。では、鉄道会社にとって、コスト削減の努力とはなにか。
鉄道会社の「総括原価」は3年間の加重平均で算出される。一方、上限運賃改定の審査には1年かかるといわれている。つまり、消費税率の変更の1年前。今が「総括原価」査定の3年間の仕上げのときだ。
そこまで考えると、鉄道会社の行動を考察する助けになるだろう。大幅な赤字を垂れ流すローカル線は廃止したい。旅客増や利益増に結びつかない割引きっぷは取りやめたい。それらのコスト削減策をいつやるか。今だ。
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