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» 2013年03月08日 08時00分 公開

ダイシン百貨店にみる総シニア時代の「居られる店」づくりカイモノマーケティング(2/3 ページ)

[澤地正人,Business Media 誠]

共創で実現する5つのグッドポイント

 共創は、商品を作るメーカーだけのことではありません。小売業にとっての店づくりにも重要なテーマの1つなのです。昨今、その特異性から取り上げられることの多い「ダイシン百貨店」(東京都大田区)も、顧客との共創による店づくりが特徴的です。

 ダイシン百貨店は、半径500メートルの住民を100%顧客にするという戦略のもと、地元密着型の百貨店を展開しています。お客さんの7割は高齢者で、そのためのさまざまな仕掛けで「何もなくても行きたくなる」店づくりを行っています。

1. 要望に応えてくれる「安心感」

 お客さんの「欲しい」に応えるかたちで、品ぞろえを増やし、他店では扱っていないような商品でも「お客さんのために」と扱います。例えば「柳屋のポマード」や「マクセルのカセットテープ」など、大きくは売れなくても、欲しいお客さんがいるのなら売るという方針です。ネット購買に見られる「ロングテール」のリアル版ですね。この品ぞろえがお客さんにとって「ダイシンなら置いてある」という「安心感」につながっているのです。

カイモノカイモノ (左)棚のすべてが猫用の缶詰(右)歯ブラシだけでこの品ぞろえ

2. くつろいで、ゆっくりできる「居心地の良さ」

 店内のいろいろなところに、くつろげる仕掛けがあります。例えば、食品売り場や雑貨売り場には大きめのソファを配置。買い物途中に休んでもらうためでしょう。売り場の中にソファがある店はほかに見たことがありません(スペース効率を優先したらできません)。

 ほかにも本屋の近くに広めのカフェスペースがあったり、足湯付きのカフェがあったりと、買い物をしなくてもゆっくりできるようになっています。こういう仕掛けが、何もなくてもつい行ってしまう「居心地の良さ」を生んでいるのだと思います。

カイモノカイモノカイモノ (左)食品売り場にソファ(中)ゆったりしたカフェスペース(右)奥が足湯になっているカフェ

3. 店員が多くて親切

 店内を回遊して感じるのは、店員の多さです。1Fの食品・雑貨売り場には、通路に1人ずついるのではないかと思うほどです。みなさんにも、売り場で店員さんに話を聞こうと思ったときに見つからず、探し回ったという経験はありませんか? ダイシンではそれはありません。ちょっと振り返れば店員がいます。

 細かいことですが、この安心感も来店を促す大事なポイントです。筆者が家電売り場を訪れたときには、高齢者の方にプリンターの使い方を、大きな声で丁寧に教えている店員さんが印象的でした。こういう丁寧な接客、対話こそが選ばれる店のポイントなのです。

4. 1日1回、お店に足が向かってしまう仕掛け

カイモノ ゲームは1日1回まで

 1日1回、店内にあるスロットゲームができます。ポイントカードシステムと連動しており、結果によってもらえるポイント数が違うためゲーム感覚でやりたくなる仕掛けです。

 高齢者の方がひっきりなしにやってきてポイントゲームをしていました。単純だけどついやってしまう仕掛けと、1日1回という縛りで「また明日も来よう」という来店促進につながっているのですね。

5. 地元への貢献を忘れない

 貯めたポイントは、地元商店街のお買い物券に変えられます。近隣の加盟店でもポイントを貯めたり、使ったりできます。加盟店で使われたポイントは、ダイシンが換金するという徹底ぶり。

 ほかにも住民への貢献として、高齢者向けの無料弁当宅配サービスがあります。1個から注文OKなうえ、何と安否確認までしてくれます。このような近隣店の活性化、住民の安全確認といった利他的な貢献サービスを通して、住みよい街づくりを支援することが、結果的にダイシンの安心、信頼につながっているのでしょう。

 定期的なイベント、巡回バスによる送迎、無料配送と、至れり尽くせりのサービスで、お客さんの心をがっちりとつかんでいます。ここまでされたら、何もなくても行きたくなりますね。

 これらの「お客さま目線」サービスは、接客時の会話やイベントなどでのコミュニケーションからヒントを得て、お客さんといっしょになって作り上げていったものだと思います。まさに「共創力」の賜物ですね。

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