ローカル路線を巡って近鉄と四日市市が泥沼の対立、決断はこの夏杉山淳一の時事日想(4/6 ページ)

» 2013年03月15日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

四日市市は「鉄道を維持したいが、金は出せない」

 一方、四日市市は近鉄のBRT提案を拒否する姿勢だ。なんとしても鉄道路線として堅持したい。四日市市としても内部線・八王子線の赤字を憂慮しており、2011年度から10年間の市の長期計画の中で、近鉄への車両更新費用の補助や、両路線の終点駅付近の整備を盛り込んでいた。今どき信じられないことに、昭和50年代製造の比較的新しい車両も含めて冷房車がない。これも乗客減の原因ではないか。そんななかで、2012年1月に近鉄から「車両の更新時期となる来年夏までに今後の方向性を出したい」と打診を受けた。

 近鉄としては、鉄道として存続させるつもりはないから、鉄道車両更新の補助金を出してもらってもムダ使いになると指摘したつもりだろう。しかしこの親切心は四日市市を硬化させてしまった。そして2012年6月に存続検討委員会を設置する。委員会の設置に半年もかかっている間、近鉄は準備を重ねて、8月に前述のようにBRT化の案を発表する。実はこの発表は四日市市に対して事前の通知がなかった。四日市市は近鉄に対して、Webに掲載されたプレスリリースの削除を求めたが、これを近鉄は拒否している。

 近鉄が、12月に重ねてBRTの意向を発表すると、2013年1月に田中俊行市長も反論。「BRTは容認できない。鉄道存続に向けて腹案を検討している」。しかも「赤字の3億円は全額補てんできない」と言い切った。近鉄のBRT提案には、初期費用について四日市市にも25億円から30億円の初期投資を求める意向と報じられた。もちろんこれも四日市市は拒否する姿勢である。あれ、車両更新費用を補てんする予算があるんじゃないか、と思うが、鉄道でなければお金は出さないし、しかも全額は出せないという。

 このままではらちが明かない……。おっと、ほとんど無人駅だからラッチ(改札)はないんだ、などと冗談を言っている場合ではない。

内部線

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