ローカル路線を巡って近鉄と四日市市が泥沼の対立、決断はこの夏杉山淳一の時事日想(5/6 ページ)

» 2013年03月15日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

負担は毎年の赤字3億円だけではない

 どうも報道を追う限り、近鉄と四日市市の対立は平行線のまま。泥沼化しているようである。ハッキリしていることは、近鉄のBRT化の意志は固いこと。四日市市にはお金がないこと。毎年の赤字3億円は、四日市市にとって容認しがたい数字かもしれない。では近鉄にとって3億円はどうかといえば、実は近鉄グループの平成24年度の連結純利益は180億円もある。だったら3億円くらい負担してくれても……。それが四日市市の本音かもしれない。

 しかし、鉄道路線というもの、毎年の赤字補てんだけでは済まない。今後は老朽化した鉄橋の架替えなど、大きな出費が控えている。鉄道を維持するにしても、なんとか3億円をクリアすれば……という問題ではない。格安の中古マンションを買ってみたら、2年後に大規模修繕が必要で、さらに数百万円の負担が必要だ……というようなものだ。近鉄が切り離したい費用は3億円どころではなく、今後の鉄道施設の更新費用全てだろう。しかも近鉄八王子線の主な乗客は、四日市南高校の生徒さんたちだ。少子化で乗客は減っていくのである。

 実は、近鉄のローカル線切り離しは過去にも例がある。2007年には伊賀線と養老線を分社化し、それぞれ自治体の出資を仰いで伊賀鉄道、養老鉄道を発足させた。これらは近鉄の出資比率が高く、現在も近鉄の子会社だ。線路も車両も近鉄が保有する。しかし、赤字の補てんは自治体が行う。つまり、自治体が補てんしやすくするために、路線を分離し、独立会計としたわけだ。

 また、内部線・八王子線と同じナローゲージの路線として、同じ三重県内に近鉄北勢線を保有していた。この路線も近鉄が廃止方針を打ち出したため、2003年に近隣の三岐鉄道が引き取り、沿線自治体の支援を受けて路線を維持している。こちらは自治体と三岐鉄道に10年間という約束があり、今年、期限を迎える。こちらは昨年9月に平成27年度までの支援延長が決まっている。

軌間は762ミリメートル。黒部峡谷鉄道のトロッコ列車と同じ。新幹線(1435ミリメートル)の半分くらいの細い線路だ

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