札幌市電「400メートルの延伸」がもたらす大きなメリット杉山淳一の時事日想(4/4 ページ)

» 2013年04月19日 08時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]
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札幌市電の環状化で輸送力の波動対応が可能になる

 札幌市電の場合、全線が複線区間だが、両端の西4丁目電停とすすきの電停は線路が1本しかない。したがって「駅に電車が到着し、乗客が全て降り、運転士が移動し、乗客をすべて乗せる」という一連の動作が終わるまで、次の電車は駅に到着できない。そのため、短い電車1両で、本数の多い区間で3分〜4分の運行間隔が必要だ。

 実際は交通状況によって運行間隔は偏る。2台以上の続行運転もあるだろう。しかし、それでも折り返しのために3分以上かかるから、続行運転しているにもかかわらず、終点で後続電車が3分以上待たされるという状況が発生しているはずだ。あるいは、途中の電停で時間調整のため3分以上停車する場合もあるだろう。

 結局、通勤時間帯で乗客が急いでいても、折り返しの3分に制約されてしまう。こうなると、続行運転で電車が来た場合、急いでいる乗客は前の電車に集中する。さらに電車が遅れる。後続がつかえる……となっていく。

 この状態は環状線化で解消される。折り返しが必要ないから、運行間隔の3分の縛りはなくなる。路面電車は続行運転可能なため、1分間隔も可能。30秒間隔もできそうだが、乗降時間があるのでさすがにそれは無理か。それにしても、400メートルの延伸で環状線になれば、いまより運行間隔は短縮でき、増発も容易になる。

 札幌市では環状線化の次の段階として、路面電車の札幌駅前乗り入れを検討している。ただし、駅前通りを札幌駅まで伸ばすとなると、終点の札幌駅前電停で折り返しが発生する。しかし、駅前に小さなループ線を作ったり、隣の道路を使えば環状化できる。それだけの輸送量と運行頻度を期待するなら、ここは「環状」にこだわったほうがよさそうだ。

札幌市電は西4丁目とすすきの電停も改良する予定
札幌駅前電停も環状化を徹底したほうがいい。左は複線を延長し、終端駅をループ状に置いた。右は一方通行の環状線を作る案。「札幌LRTの会」も提案している
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