就活や転職、若年層を中心としたキャリアについて、仕事柄仕方なく詳しくなったサカタカツミが、その現場で起きている「当事者たちが気付いていないフシギ」について、誰にでもスルッと理解できるように解説するコラム。
使えない部下が毎年出現するのはなぜなのか? その理由も、垣間見えるはずです。
クリエイティブディレクター。1967年生まれ。長年、就職や転職、キャリアに関するサービスのプロデュースやブレーンを務めている関係で、就活や転職には詳しい。直近でプロデュースしたサイトは「CodeIQ」。著書に『こんなことは誰でも知っている! 会社のオキテ』、『就職のオキテ』がある。
個人的に書いている就活生向けのブログは、なぜか採用担当者たちから「読んでいて心が痛くなります。ホントにつらいです」という評価を受けている。Twitterアカウントは@KatsumiSakata。
一足早い夏休みでイタリアに行っていた編集長の吉岡綾乃さんと話をしていた時のこと。綾乃さん曰く「トレビの泉の前に立って、写真を撮りながら『ああ、これがトレビの泉だな』と思いつつ『だからどうした私』とも考えちゃったんですよね。違和感でもない、なんというかちょっと不思議な感覚で、上手く言葉にできないんですけど」と。
トレビの泉よりも、道中いろいろ食べまくっていたイタリアの美味そうな料理の写真を見せてよね、と言いながら、私は「だからどうした、って感覚が分からない人事には困ったものだ」という話を思い出していたのです。
先日、ある企業の人事から会社の歴史を従業員に伝えていきたいので、上手い方法はないかと相談を受けました。その相談の内容に驚いたのもさることながら、似たような相談を同じ時期に立て続けに見聞きしたこともあって、私は「いま、人事の間で社史を編纂するブームが来ているのか」と錯覚を起こしたほどです。彼らに「どうして社史を従業員に伝えたいのか」と質問すると、予想通りの答えが返ってきました。
「我が社は過去に画期的な製品やサービスを世に送り出してきています。当然、新卒採用時にはその話を学生に熱心にして、そういう歴史なり社風なり、企業のキャラクターとでも表現すればいいのでしょうか、そこに惚れ込んで入社してもらおうと心がけています。しかし、中途入社の人はその教育が十分じゃなくて、今の仕事やこの職場で働くことに、プライドというか、自信を持っていない気がするのです」
その結果、従業員の士気が下がったり、与えられた仕事に熱が入らなかったり、挙げ句の果てには退職してしまうケースもあるのだとか。だから、あなたはこんなに素晴らしい歴史と伝統を持った、そしてこんなに世の中に認められてきた企業の一員であることに誇りを持ってほしい、というレクチャーを企業の歴史を通して行いたいと、相談をしてきた人事は考えていたようです。
これを聞いて、私が頭を抱え込んでしまったのは言うまでもありません。そんなことをしても、すでに掛け違えたボタンを直すことはできない。そのことに、彼らは気がついていないのですから。
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