参院選後を読む、安倍首相は救国の指導者となるか藤田正美の時事日想(3/4 ページ)

» 2013年07月10日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

 この社会保障関連費用は総額で年間100兆円を超えているが、そのうち国税や地方税から支出される分はだいたい40兆円ぐらいだ(国の支出分だけだと28兆円程度)。1000兆円にも及ぶ国の借金を減らそうと思えば、この最大の支出項目である社会保障関連費に手をつけなければならない。消費税引き上げを決めた民主党政権は、社会保障を維持するために消費税引き上げをお願いするとよく言っていたが、実は現在の社会保障を維持したままというのは不可能だと思う。

 人口の塊である団塊の世代は、いま前期高齢者になった(参考記事)。この人たちが後期高齢者に入り始めるのが2022年。そこから医療や介護の費用が激増することが予想されている。そこまでに制度を変える、つまり社会保障の給付の制限をしなければ、社会保障の重みで押しつぶされてしまうかもしれない。

「無能」な政治家たち

 日本の政治はこれまでこの状況に対してあまりにも「無能」だった。例えば70歳から74歳の老人医療費の自己負担分は本来2割であったのに、それを1割にしてわざわざ赤字を増やしてきたのは昔の自公政権である。民主党も2割に戻すとは言ったが、とうとう実現しなかった。本来の2割に戻すことで節約できる分は2000億円程度だが、こういうことを国民に向かって率直に話し、理解を得るのが政治家の仕事なのである。衆参ねじれがなくなったとき、この政治の本来の課題が自公政権に肩にずっしりとかかってくる。

 忘れてはならないのは、自公政権が痛みを伴う政策を先延ばしする余裕はないということだ。日銀がいくら金融を緩和しても、政府の財政赤字をファイナンスしているだけだと判断されれば、麻生財務大臣がよく言うように「日本の国債の信認が薄れてしまう」のである。そうなったら、国債は市場で売り叩かれ、結果的に長期金利が上がることになるだろう。

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