「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”」
ワシントンで開かれたG20の財務相・中央銀行総裁会議。日本は「大胆な」金融緩和で急激な円安が進んでいただけに、新興国を中心に「苦言」が出ないか心配していた。しかし結果的には、先進国からの支持があったためか、表だって批判されることはなかった。
日本に残った宿題は「成長戦略」と「財政再建のロードマップ」ということになった。これはなかなかの難題だ。成長戦略は、規制緩和をどれだけできるかにかかるだろうが、規制緩和は常に既得権益を持っている人々から猛反発を食らう。農業をはじめとして、既成の利益団体はほぼ自民党支持層にだぶる。それでも安倍総理はTPP(環太平洋経済連携協定)への参加を決めた。規制緩和の最大の抵抗勢力は官僚組織だが、安倍首相が高支持率を背景に押し切ることは可能かもしれない。
もっと難しいのは財政再建のロードマップである。麻生財務相は、2013年半ばには「中期財政計画」をまとめると語った。具体的な政策はこれから最終的な詰めに入るということだろうが、これから予定されている増税だけでは、政府が目標としている2015年での基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の赤字半減はもちろん、2020年での黒字化は難しいということだけは明白だ。消費税が10%になって税収が増えても、PBの赤字の半分も埋まらないのが実情だからである。
財政再建の方法はいくつかある。増税、歳出削減、経済成長、そしてインフレだ。どれかひとつだけで、20兆円を超えるPBの赤字をゼロにすることはできない(ちなみに赤字がゼロになる、つまり政府が政策のために使う資金が税収などですべて賄えたとしても、それは国債をさらに積み増さずにすむということにしか過ぎず、巨額の国債残高はそのまま残り、巨額の利息は毎年払わなければならない)。
その4つの政策のどれも政府にとっては容易ではない。しかし日本の場合、そして多くの先進国の場合、いちばん大変なのは歳出の削減だろう。なぜなら歳出の削減と言っても、削減して効果があるのは予算のうち最も大きな金額を占める社会保障関係費だからだ。平成25年度の予算では29兆円だ。その次の項目は地方交付税交付金の16兆円。民主党時代に目の敵にされた公共事業は5兆円強、防衛関係費も5兆円以下である。
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