「JRおでかけネット」や「マイ・フェイバリット関西」といったメディアを運営している、西日本旅客鉄道(以下、JR西日本)。同社鉄道本部営業本部宣伝クロスメディア課長の小菅謙一氏は、これらのオウンドメディアを使って、ネットを活用した「おでかけ需要」の創出や、関西の活性化に取り組んでいる。
小菅氏が強調するのは「他社との協調」そして「ネット&CRMの活用」の重要性だ。JR西日本ではどのような施策を行ってきたのか。以下、過去の取り組みを見ていこう。
小菅氏のミッションは、人々の“おでかけ需要”を喚起して鉄道利用を増やすことだ。人が鉄道に乗って出かける目的は大きく2つ。1つは出張などのビジネス利用、もう1つが旅行などのレジャー利用である。出張は増やせないので、ターゲットはレジャーでの鉄道利用を増やすこと。JR西日本が持つオウンドメディアを、いかに活用するかがポイントとなる。
「おでかけ需要=(a)目的地の魅力×(b)商品力×(c)情報伝達力、です」(小菅氏)
エリア内の観光スポット(目的地)へ、旅行会社などと協力しながら、魅力的なパッケージ旅行を企画する(商品力)。そしてそれをいかに広告宣伝するか(情報伝達力)が大事、ということだ。
情報伝達力の代表例が、JR西日本のWebサイト「JRおでかけネット」(参照リンク)。鉄道の案内、列車運行情報、時刻・運賃検索などが基本コンテンツとなる。ここにプラスアルファとして、観光情報、新幹線や特急の予約、会員サービスといった情報も提供している。ただし、「おでかけ需要を創出するには、JR西日本単体では不十分で、他者との連携が必要」「Webサイトだけでも不十分なので、CRM(会員サービス)を活用する」と小菅氏は述べる。
おでかけ需要を作るために、JR西日本では(1)地域(2)旅行会社(3)JR西日本の3者の連携を重視しているという。地域では観光素材を造成して、おもてなしをする。地域から観光素材の提案を受けたJR西日本は告知やプロモーションを行い、目的の観光地までお客さんを乗せていくのが役目だ。そして旅行商品を作り、販売するのが旅行会社の仕事となる。
地域、旅行会社、JR西日本の3者3者がそれぞれ強みを生かし、しっかり連携できれば、おでかけ需要を喚起できる。例えば、観光地の開発を地域に任せっきりにするのではなく一緒に考えていく。また、観光地を旅行会社に紹介して企画商品をつくる……といったリアルな連携が重要だという。
3者連携の例として挙がったのが、「DISCOVER WEST」だ。仲間由紀恵さんが出演するテレビCMやポスターに見覚えがある人も多いだろう。DISCOVER WESTは、新幹線の乗客を増やし、首都圏から中国地方(広島、岡山などの観光地)への送客を増やそうというキャンペーンである。
地域(中国五県)と連携して協議会を作り、例えばまちおこしに協力したり、駅から観光地までのバスアクセスなど地域の整備を手伝ったり、首都圏の旅行会社と一緒に「首都圏の人から見た中国地方の魅力は何か?」などを議論したりしながらプロモーションを展開してきた。2003年からこのキャンペーンを行った結果、2002年には8000人しかいなかった旅行客※は毎年増え続け、2012年には39万2000人まで増えたという。
昨今のスマートフォンの普及を受け、「企業とお客さまの情報の接点が変わってきていると思います」と小菅氏は言う。上述の3者(地域、旅行会社、JR西日本)に加え、お客を加えた4点の連携、ということで仕掛けたキャンペーンが「鹿児島カレッジ」だ(参照リンク)。
鹿児島カレッジとは、「関西・中国エリアの大学生たちが、地元(鹿児島)との交流体験を通じて旅の素晴らしさを発見する」という試み。2011年に九州新幹線が開通したことを受けて行われた。
参加したのは、関西・中国エリアの6大学の学生たち。実際に鹿児島に行って素材を発掘(観光資源を探し)、若者目線での旅行プランを立てて提案する、というものだった。3泊4日の現地実習中には、学生たちがFacebookで写真や文章を投稿しながら「ここ良いよ!」と現地で情報発信を行って、ソーシャルメディアで情報を広めていこう、という狙いがあった。
結果として、鹿児島カレッジの試みはネット以外にも拡大。テレビで1時間の特番が組まれ、地元鹿児島や関西エリアでも放送されたほか、「鹿児島よかとこ大学生目線の旅」と題した新聞記事になるなどの多くの反響があった。また、学生たちが考えた旅行プランは、実際に関西の旅行会社3社で商品化されたという。
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