もちろん、JR東日本にとって預り金の500円は丸もうけではない。Suicaカードの原価は約400円という話だし、システム構築やメンテナンスにもお金はかかる。だからこそビッグデータで余録を稼ごうという気にもなるだろう。ただし、Suicaの預り金とコストは相殺されない。発行コストは経費として処理される一方、預り金は収益とならず、Suicaが返却される時まで負債として処理されるからだ。
しかもSuica利用者のほとんどが何年もSuicaを使い続ける。1年使ったらその都度返金とはならないからだ。つまり、Suicaの預り金は事実上、固定負債である。「JR東日本がSuica利用者から借りたお金」と同義だ。借金である。Suica利用者に借りた形とはいえ、返却時に返す金額は500円。金利を付けて返す仕組みではない。預り金は売り上げではないから税はかからない。つまり、178億円は金利のない借金であり、これを運用した利益は丸もうけである(もちろんその利益には税金がかかる)。
誤解しないでほしいが、これをもってJR東日本を責めるつもりはまったくない。預り金を発生させるビジネスはオイシイ、うまいことやったな、と感心している。Suica利用者は便利だと感じているし、JR東日本はもうかる。誰も損をしない。良いビジネスだ。つまり、Suicaが預り金を集金したようなマクロマネー型のビジネスはもうかるという話である。
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