米国の予算審議が滞り、世界景気の腰を折る藤田正美の時事日想(1/2 ページ)

» 2013年10月02日 06時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 何とかよろめきながらも回復に向かっているように見える世界経済。しかし不安の火種はなかなか消えない。日本は安倍首相が消費税の引き上げを決断し、2014年4月以降は8%になる。2013年第1四半期、第2四半期と年率にして4%台の成長が続いてきたことが大きな要因だ。

 とはいえ、デフレから本当に脱却できるかどうか、まだ明らかではない。物価上昇率はこのところプラスになっているとは言っても、エネルギーの値上がりが大きな理由。決して「いいインフレ」になっているわけではない。

 そこにちょうど重なってきたのが、米国の2014年度(13年10月〜14年9月)の予算だ。新年度の予算はいまだに決まっておらず、かつ10月半ばにかけては米政府の債務の上限問題がクローズアップされる。

米国の予算審議が進まず17年ぶりの異常事態に

米国

 今週の月曜日には、世界の株価は神経質な動きかたをした。投資資金がリスクを取らない方向に動いたため、世界の株価は下がり、ドルはユーロや円などの通貨に対して安くなった。日経平均も、円高と米政府の予算問題の不透明さが嫌気されて、前週比304円安と大幅に値下がりした。

 米オバマ政権はいま2つの問題に直面している。1つは2014年度予算。野党である共和党(下院多数派)がいわゆるオバマケア(医療保険改革法)に強く反対し、この機をとらえて何とかつぶそうと動いているためだ。具体的には、上院が決めた暫定予算案を、下院がオバマケアの実施を延期する形で修正した(ただし、この医療保険改革はオバマ大統領の目玉政策であり、与党民主党が多数派を占める上院が共和党の修正案を受け入れないだろう)。

 このため10月1日から連邦政府の一部が閉鎖されるという17年ぶりの「異常事態」になった。その上、10月中旬には米政府の債務が上限に達し、それを超える国債を発行できなくなる。すでにルー財務長官は、早めに手当てすべきだと議会に「警告」していたが、現在の議会の状況からするとそれどころではない。

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