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経費は年末に増やせ! 個人事業主の節税対策【後編】消費税8%時代の確定申告(4/5 ページ)

» 2013年12月06日 08時00分 公開
[ITmedia]

個人事業主ならではの控除でガッツリ節税

 経費と同様に控除も積み上げれば節税となる。配偶者控除、扶養控除、生命保険料控除などはすべてサラリーマンと同じだ。「年末調整の節税効果を検証、サラリーマンの税金を考える(参照記事)」を参考に確定申告時に漏らさないようにしよう。

 個人事業主ならではの控除で節税する方法を紹介しよう。まずは個人事業主の節税の本命といえる「小規模企業共済」だ。これは経営者の退職金制度と呼ばれるもので、その年に納めた全額が小規模企業共済等掛金控除として控除の対象となる。

 掛金は月額1000円から7万円。満額の7万円なら84万円が控除の対象となる。Aさんのように所得税の税率が20%なら、その約3割の25万円ほど納税額を減らすことができる。貯蓄してもらえる利子より節税効果の方が大きいので財布から支出することなくガッツリ節税できる。

 1000円刻みで掛金の増額、減額も可能なので、業績が落ちたら減額し、もうかったら増額することもできる。年払いも可能で、12月に翌年の11月までの1年分を納めればその全額が控除の対象となる。年末に業績を確認してから掛金を決めれば、柔軟に節税対策を行える。

小規模企業共済 増額、減額は書類を1枚書いて銀行の窓口に提出する

 個人事業主が納める国民年金は、サラリーマンの厚生年金に比べると少額だ。さらに厚生年金は会社が半額を負担するので、その差は数倍となる。当然、将来もらえる年金も個人事業主は少なくなる。将来を考え、国民年金基金に入ればもらえる年金を増やすことができ、納めた全額が控除の対象となるので節税対策にもなる。小規模企業共済を満額にしてもお金が余っているなら国民年金基金も有効な節税対策となるはずだ。

申告ソフトの力を借りて……青色申告特別控除

 節税対策の最後は青色申告特別控除だ。個人事業主は青色申告と白色申告を選択できる。青色申告はしっかり記帳する見返りとして納税額を減らせる。具体的には複式簿記による記帳、貸借対照表、損益計算書などを作成しなければならない。

 複式簿記、貸借対照表、損益計算書……何それ、と思った人も多いだろう。筆者もその1人だった。今でもよく分かっていない。ザックリ言うと、よく分からないが書類を作ったら税金を減らしてくるのが青色申告だと理解しよう。

 ではどうするか。ここで登場するのが青色申告ソフトだ。PCがない時代には帳簿を作成すること自体が高いハードルだったと思われる。だが青色申告ソフトを使えば、筆者のようにまったく簿記の知識がない人でも複式簿記による帳簿の記入、貸借対照表、損益計算書などが作成可能だ。税金のことを何も知らず、勉強もせずにできるほど簡単ではないが、今回の記事が理解できる程度であれば、後は青色申告ソフトが助けてくれるはずだ。

 青色申告ソフトの助けにより、簡単とは言えないが不可能でもない青色申告ができたら65万円の青色申告特別控除の特典を得ることができる。所得税の税率が20%の人なら住民税と合わせて約3割、20万円ほどの節税となる。青色申告をする仕事の報酬が20万円と考えればよいだろう。

 この青色申告特別控除は経費のように自分の財布からお金を出す必要はない。小規模企業共済のように掛金を納める必要もない。1円も動かさずに節税ができるのは、サラリーマンの給与所得控除のようにうれしい特典だ。

白色申告の記帳義務化:

ちなみにもう一方の白色申告は、従来は前々年分あるいは前年分の所得が300万円以下であれば記帳義務はなかった。ところが、2014年(来年)からは所得300万円以下の人も含めすべての白色申告をする人に記帳義務が課せられる。これにより今までどんぶり勘定だった人も、来年からは売り上げ、経費などの年月日、取引先、金額などを記載し残すことが必要となった。

 →「青色申告と白色申告はどう違う? 個人事業主の確定申告について」(参照記事)


 青色申告には青色申告特別控除以外にも特典がある。減価償却のところで紹介した「少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例(措置法28の2)」も青色申告の特典だ。他にも赤字の繰り越し、奥さんに事業を手伝ってもらう人なら青色専従者という特典もある。

 なお、青色申告をするためには事前申告が必要だ。開業日から2カ月以内(開業日が1月1日から1月15日の場合はその年の3月15日まで)に「青色申告承認申請書」を提出しなければならない。11月に開業届を出した人はこれから申請すれば間に合うが、すでに開業から2カ月を過ぎた人は、2014年3月15日までに申請をして、来年分から青色申告をすることになる。

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