若い自分のままで150歳まで生きられるとしたらどうしますか?伊吹太歩の時事日想(2/4 ページ)

» 2014年01月30日 08時00分 公開
[伊吹太歩,Business Media 誠]

 ある英国の著名な科学者が真剣にそんな主張をして物議を醸している。米国老年学会の研究員であるオーブリー・デグレイ博士だ。彼は現在、老化対策を工学的に取り組むSENS(参照リンク)という組織を設立して研究を続け、彼の理論を世界中に伝えている。

 デグレイ博士は、老化をもたらす体のダメージを修復することで人間の寿命は劇的に延びると言う。これまで「150歳まで生きる最初の人間はたぶんもうすでにこの世にいるだろう。その可能性は90%であると見ている」と言って世界から注目を浴びた。さらに「1000歳まで生きる最初の人間は今後20年以内にこの世に誕生するだろう」とも語っている。

 こんな発言をすると、デグレイ博士というのは「トンデモ理論」を吹聴する疑似科学者なのではないかと疑われるかもしれない。だが彼は英国のケンブリッジ大学で博士号を獲得し、米国のハーバード大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)といった名だたる大学で講演を行うほどの有名科学者だ。母の死で相続した多額の遺産を研究に惜しみなくつぎ込み、世界中で講演活動などを行っている。

 デグレイ博士の研究を支持する声は多い。オンライン決算サービス「PayPal」の共同設立者で元CEOのピーター・ティエルは、デグレイ博士の研究にこれまで少なくとも350万ドル(約3億5000万円)を提供している。ティエルはデグレイ博士への協力について、こう語っている。「科学における本当の飛躍的進歩は、人々が賛否ある、または怪し過ぎると考えるような研究部門に取り組む意思のある真剣な思想家によってなされるものだ」

 先日、そんなデグレイ博士と話をする機会を得た。彼の考えに疑念を持ちつつも、人間が150歳、いや1000歳まで生きるなんてことが現実になれば、人の生き方のすべてがひっくり返ると思い、興味津々に彼の言葉に触れた。

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