しかし、ヤンキースはこれだけで終わらせず、さらなるサプライズを起こした。2012年末、YGEはYESの持ち株49%を「世界のメディア王」の異名を持つルパート・マードック氏率いる巨大メディア企業ニューズ・コーポレーション社へ売却した。YESの企業価値がぐんぐん上昇したところを勝負時と見て手放し、メディア王から売却総額30億ドル(約3066億円)という巨額の利益を手にすることに成功したのである。
「YGEは、売却額のうち5億ドル(511億円)の頭金を受け取っていて、それを田中の獲得資金などヤンキースの補強費用に回している。持ち株の売却と同時にYGEは、新しくYESの親会社となったニューズ・コーポレーション社側と、それまで8500万ドル(約87億円)程度だった年間放映権料を1年ごとに約5%ずつ上昇させる確約も取り付けた。
その流れでいけば、2042年の年間放映権料は3億5000万ドル(約358億円)にもなる。今度は所得分配制度による支払い額を見越した上で、高い放映権料で収入を得ようという計算です。しかもYGEは、まだYESの持ち株を27%保有しているから同局での発言権も、まだそれなりに握り続けている」(地元メディア関係者)
ヤンキースは、田中の獲得によってチームの総年俸が規定ラインの1億8900万ドル(約193億円)を超え、50%もの「ぜいたく税」がMLBから課せられる見込み。それでもヤンキースはビクともしない。米経済紙フォーブスによれば、ヤンキースの2013年の収入は4億7100万ドル(約481億円)だ。
毎年のように巨大補強を行い、多くのスター選手へ高額のギャラを支払っていても「球界の優良企業」として君臨できる背景には、経営陣のしたたかさがあるようだ。
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