そうして一軍と二軍を行き来する中途半端な選手生活を続けているうちに昨今は「もういい加減、引退しろよ!」などという辛らつなバッシングも強まってきていた。かつて「ハンカチ王子」として一斉を風靡(ふうび)したネームバリューに魅力を感じた複数の民放テレビ局やアナウンサー所属事務所が、斎藤にスポーツキャスター転向を水面下で打診していたという話も聞こえてきたほどである。
人気も実力もイマイチで「戦力外」の足音も聞こえてきそうな雰囲気になってきた今年6月。栗山英樹監督が斎藤と人知れず話し合いの場を持った。指揮官の目的は彼の気持ちを確かめること。栗山監督からの「まだ戦えるか?」という非常にシンプルな問いかけに対し、斎藤は底抜けに明るい表情で次のように答えたという。
「もちろんですよ! ここまでご迷惑をおかけしてしまったぶん、自分は頑張らなきゃいけません。こういう言い方をするのもヘンかもしれませんが、逆にケガをしたことで学ぶことも多かったんです。その教訓を一軍のマウンドでお見せできればと思っています。今まで申し訳ありませんでした。だから、結果を出すチャンスをください。よろしくお願いします」
こう言われた栗山監督は「選手生命の危機とまで言われた男が、どうしたらこんなポジティブな考えになれるのか」と少々面食らったそうだ。そして同時に自然の流れで「この男の『超プラス思考』に賭けてみたい」とも思ったという。
人よりも抜きん出た決め球を武器にしているわけでもないのに、群雄割拠のプロ野球界で今も生き残っている斎藤。この度胸満点の「超プラス思考」はビジネスパーソンにとっても見習うべき点が多いかもしれない。ただし一歩間違えれば「KY」なので、周りの空気をしっかりと読むこともお忘れなく。
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