以上のように、自宅介護というのは非常に難しい選択を余儀なくされることになる。しかし、冒頭で触れたように、現実に介護離職する方は少なくないし、今後ますます増えそうだ。シミュレーションで触れたように、田舎に兄弟などがいれば負担は相当軽くなるが、そうした都合のよい状況になるとは限らない。苦渋の決断をする家族は少なくないだろう。
在宅介護を重視する方向に政策転換が進みつつあるとはいえ、施設介護の選択肢が今現在細くなっているわけではない。しかし、介護産業の構造が今のままでは、人手不足を原因として施設介護はどんどん“狭き門”になる。
さらに今後、財政官僚と厚生官僚は間違いなく在宅介護重視の制度変更を仕掛けてくるはずだ。10年もしないうちに中流以下の家庭では、費用負担面から在宅介護を選ぶしかない状況に陥るかもしれない。
日本政府は、中流以下の家庭に厳しい政策を採る傾向にあるので、よくよく注意しておきたい。いずれにせよこのままでは、多くの家族が自宅介護を余儀なくされ、そのために職を離れて家庭が崩壊しかねない――そんな危機が日本社会に迫っていることは間違いないのだ。(日沖博道)
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