日本の航空業界を取り巻く動きが騒がしくなってきた。格安航空会社(LCC)が大手航空会社に相次いで支援を求めているのだ。
11月下旬、経営不振のスカイマークが日本航空(JAL)に共同運航の業務提携を打診していることを明らかにした。同じく11月には、赤字が続くジェットスター・ジャパンに対し、JALと豪カンタス航空グループが最大110億円を追加出資することを発表した。さらに12月に入ると、スカイマークが今度は全日空(ANA)にも共同運航を要請する方針を固めたという。
スカイマークは、2015年3月期の最終損益が過去最大の136億円の赤字になる見通しであることに加え、エアバスの大型旅客機「A380」の売買契約をめぐり巨額違約金を求められるなど危機的状況にある。業績回復を急ぐべくJALに連携を持ち掛けたが、国土交通省などは難色を示している(関連記事)。
ジェットスターは、2014年6月期の純損益がマイナス111億円で、3期連続の赤字となった。事業立て直しを目指し、2013年10月にJALとカンタスグループが約110億円を第三者割当増資を行ったが、今回再び増資することになった。
スカイマークとジェットスターが経営難に陥る一方で、同じLCCのピーチ・アビエーションは、2014年度3月期の純利益が10億4600万円の黒字で、前年同期の12億900万円の赤字から大幅な収益増となった。2012年3月に就航してから3年で単年度黒字を達成したのである。
ピーチ・アビエーションが好調の理由の1つには、高い搭乗率がある。LCCの採算ラインが8割と言われる中、2014年度3月期の平均搭乗率は83.7%で、11月24日には累計搭乗者数が700万人を超えた。加えて、ほかと比べて空港施設使用料の安い関西国際空港を拠点にしていることや、徹底的なコスト削減など(関連記事)が功を奏しているのだ。
このように勝ち負けが鮮明になりつつある日本のLCCだが、ピーチ・アビエーションのように今のところ成功を収めている航空会社は珍しい。今後、LCC市場はどのように変化していくのだろうか。航空業界に詳しい野村総合研究所(NRI) 公共経営コンサルティング部 上席コンサルタントの石井伸一氏によると、この先も「低迷する新規参入の航空会社(LCC)が経営支援という名目で大手の支援を受けていくトレンドは続く」という。
一方で、特に日本においては、LCCと大手航空会社との市場に明確な区別がないため、今後ますます顧客を奪い合う“カニバリゼーション”が起きると石井氏はみている。その結果、「大手キャリアやLCCを含めて合従連衡が進み、JALとANAの大手2社グループに集約(関連記事)されていくのが最もあり得るシナリオだ」と石井氏は解説する。
どうしてJALやANAはLCC各社を支援するのか。なぜなら、航空業界は独占力や市場シェアが競争力そのものとなるからだ。かつてJALと日本エアシステム(JAS)が経営統合したことで、それまで国内市場の約50%のシェアを持っていた全日本空輸(ANA)は、破たんしかけていたAIRDO(エアドゥ)やスカイネットアジア航空などへ相次いで経営支援を行い、国内シェアの拡大に努めたのが好例である。
業界全体に目をやると、今後、少子高齢化による国内市場の縮小や、2015年の東南アジア諸国連合(ASEAN)経済共同体の発足による航空自由化などで、大手の航空会社であっても厳しい競争にさらされる。アクセンチュアで製造・流通本部 マネジング・ディレクターを務める野田和伸氏は、「大手が生き残るためにも、LCCやMCC(ミドル・コストキャリア)を中心とした業界再編の動きが加速するだろう」とコメントした。
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