鉄道の未来は? と聞かれれば、答えは「厳しい」と言わざるを得ない。人口減で需要が減少するなか、台頭する格安航空会社(LCC)と整備されていく高速道路網と戦っていかなければいけないからだ。
もちろん鉄道が急速に衰退するとは思えない。むしろ首都圏では次々に新線が開業し、既存路線が整備されていっている。「過当競争に陥っているのではないか」という懸念が広がるなか、地方鉄道は赤字に苦しみ、廃止・縮小を余儀なくされている。
こうした現状に対し、鉄道会社は次の一手をどのように打てばいいのだろうか。そこで鉄道事情に詳しい共同通信の大塚圭一郎記者とBusiness Media 誠で連載をしている杉山淳一氏に、徹底的に語り合ってもらった。対談は全7回でお送りする。
大塚:日本でも新幹線と格安航空会社(LCC)が競争のフェーズに入ってきましたね。ベルリンにあるLCC専用の空港を見に行ったことがあるのですが、そこは旅客ターミナルビルなどの施設がものすごく簡素。でも、たくさんの乗客がいましたね。
欧州の航空市場をみると、LCCのシェアは4割に達しています。日本でもLCCの攻勢が強まれば、欧州のように一気にシェアが高まるかもしれません。
LCCのメリットは価格。ただ今のところLCCは国内線でも発着するのは東京都や大阪市の中心部からやや離れた成田や関空発着がメインなので、そこが泣きどころ。一方の新幹線は都市部の東京と新大阪を結んでいるので、そこの優位性はある。ただLCCとの価格をどれだけ埋められるかがカギになるのではないでしょうか。
JR東日本が運営するWebサイト「えきねっと」を利用すれば、割引きっぷを購入することができますが、まだまだ十分とは言えません。鉄道会社はインターネットを積極的に使って効率化を図れば、きっぷはもっと安くできるはず。でも旧国鉄の制度を引き継いでいるJRの腰は……残念ながら「重い」と言わざるを得ません。
杉山:ですね。早期割引、ネット予約割引は充実させてほしいです。
大塚:中でも東海道新幹線はいわゆる“ドル箱”なので、JR東海としては格安きっぷを販売したくない。また2027年に品川(東京都)〜名古屋間で開業を目指しているリニア中央新幹線の建設で莫大な費用がかかるので、彼らとしても高収益体質を維持したいのでしょう。
ただLCCの攻勢が強まれば、JRは割引という形でしか対抗できなくなるはず。例えば東京−博多の乗客はかなり奪われるのではないでしょうか。JR東海とJR西日本は、価格設定の見直しを本気で考える時期にきていると思いますね。
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