モノがインターネットでつながる――「IoT」市場が急成長しているのはなぜ?ドイツでは国家プロジェクトも(2/2 ページ)

» 2014年12月18日 08時00分 公開
[平尾憲映,Business Media 誠]
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 企業でもさまざまなビジネスが生まれている。例えば、米Microsoftが大手クルージング業者の米Royal Caribbean Internationalと協業した事例が興味深い。最新式のクルーズ船で実施される食品の安全性検査などのワークフロー強化のために、船内で食品安全検査を行う機器類をインターネット上でつなげて、専用のインテリジェントシステムを構築している。これにより、機器から得られる情報を船内の管理者がリアルタイムで把握できるようになった。結果、食品検査時間を5時間から2時間に短縮するなど、収益性の向上と業務コストの削減を実現した。

店内の顧客行動をすべてモニタリングして購買率アップにつなげる(Prism Skylabsのサイトより) 店内の顧客行動をすべてモニタリングして購買率アップにつなげる(Prism Skylabsのサイトより)

 もう1つの例として、Cisco Systemsなどが提唱する、小売業におけるイノベーションがある。店舗内でモノ同士を相互接続させて、店舗の管理者が来店者の情報を取得し、消費者に有益な情報を送って購買を促進させるというものだ。これにシリコンバレーのベンチャー企業などが乗り出している。

 「Prism Skylabs」というサービスは、店内で買い物をした人の行動情報を全てカメラでモニタリングして画像解析する。商品に対する消費者の反応が把握できるので、それに合わせて店舗のレイアウトを変えたり、商品に触れている顧客にセール情報などをリアルタイムで通知したりできる。

 また、近未来に実現するであろう企業間の動きとしては、2014年11月からCisco Systemsと東芝が、製造、交通・運輸、スマートシティを中心に、グローバル規模でのIoT市場向けソリューションの開発や事業化の可能性を検討し始めている。


 このように、海外では大規模なB2B向けのIoTビジネスが登場してきている。今後、市場が拡大するためにはB2C向けの成功が不可欠だが、この分野で日本企業が参入するチャンスは大いにあり得る。

 日本企業が注目を集めている理由は、IoTの影響が大きい製造業、保険・サービス、小売業、流通業などの既存インフラが完備されているにもかかわらず、その既存インフラの中にあるモノ同士が未接続であり、そこに大きな市場価値があるとされているからだ。

 時価総額世界1位を誇る米Appleが日本の生産ラインに110億円ドル(1.1兆円以上)を投資した事例もある。これは製造工程の自動化を図ると同時に、大規模なインフラを日本に保有しておきたいという狙いがあるだろう。かつて「ものづくり大国」と言われた日本の技術が再び注目を集めているのだ。

 IoTは人々の生活を変えるイノベーションである。日本の持つ技術力やインフラを下地として、活発にサービスを生み出そうという風潮が強まれば、いつの日かGoogleやAppleのような画期的なサービスを世界に展開する企業が日本発で生まれるのも夢ではないだろう。

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