「宇宙に行くため」ではない――ロケットの本当の役割とは?秒速7.8キロメートル(2/3 ページ)

» 2015年06月16日 06時00分 公開
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問題は行った“後”

 ロケットに乗せるものは、そのほとんどが人工衛星です。人工衛星の目的は、ある程度の期間宇宙空間に留まり、地球の観測などのミッションを遂行することにあります。

 さて、この人工衛星を宇宙まで持って行って、そっとそこへ置いたらどうなるでしょうか。

 手に持っている消しゴムを離すと床に落ちます。では333メートルの高さの東京タワーからの場合はどうでしょう。さらに高い標高3776メートルの富士山の頂上の場合だったらどうでしょう。もちろん状況は同じで、物は下に落ちていきます。同様にどんどん高度を高くしていき、上空100キロメートル以上の宇宙空間まで行ったとしてもこの現象は変わることはありません。

 つまり、人工衛星は宇宙に“行く”だけじゃなく、行った後に地球へ落ちてこないようにそこに“留まる”ことをしないといけないのです。

(出典:JAXA)

宇宙に留まるために地球の周りを回る

 物が下に落ちるということを言い換えると、すべてのものは重力によって地球の中心にひっぱられていると言えます。人工衛星が宇宙空間に留まるためには地球の重力とは逆の向きに力を発生させないといけません。エンジンを使うという方法がありますが、人工衛星のミッションは数年もしくは数十年スパンであることがほとんどなので大量の燃料が必要になるのはあまり現実的ではありません。

 そこで、ほとんどの人工衛星で用いられているのが“地球の周りを回る”という方法です。水を入れたバケツを思いっきり回すと逆さの瞬間があるにもかかわらず水は落ちてこないという実験をご存じかと思います。水がこぼれない理由は、バケツを回すことで回転の中心と反対の向きに遠心力が発生するためで、人工衛星も地球の周りを回ることで重力と反対の向きにこの“遠心力”を発生させて宇宙空間に留まっているのです。

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