ベンツの未来を詰め込んだF700――3つの特徴:東京モーターショー2007
「高級車なのに低燃費」――従来の常識を覆すような車が誕生しそうだ。東京モーターショー2007でメルセデス・ベンツは、地球に優しいF700を出展した。
千葉県幕張メッセで「第40回東京モーターショー」が開幕した。一般公開は10月27日から11月11日までの17日間。
止まらない原油高や、地球温暖化が世界的な関心となる中、今回の東京モーターショーでも、「環境」が大きなテーマとなっている。Business Media 誠では、環境を意識した製品や、“自動車+IT”という視点の展示内容をピックアップして紹介していこう。
「メルセデス・ベンツ=高級車」といったイメージが定着しているが、そこに環境というコンセプトを盛り込んだ車が東京モーターショー2007で発表された。高級車は一般に車体が大きく、燃費も悪いことが多い。低燃費でCO2排出量を抑えようという“環境対応”のコンセプトと高級車は一見相性が悪いように思われるが、ダイムラー・クライスラー社では「高級車という概念を再定義する」という。その定義を実現した車が「F700」だ。
F700はコンセプトカーなので販売はされないが、ただ近い将来には、F700に載せている技術を他の車にも応用していく予定だ。そのF700に搭載されている技術は、大きく分けて3つの特徴がある。1つは低燃費のエンジン、2つめは快適さを高めたサスペンション、3つめがスイッチ類を少なくしたシンプル操作だ。
F700の3つの特徴――低燃費、レーザースキャナー連動のサスペンション、シンプル操作
F700は全長5.18メートル、全幅1.96メートル、全高1.438メートル、排気量1.8リットルで4気筒エンジンを積んでいる。走行性能はラグジュアリーカーの水準で、1.8リットルの4気筒エンジンだが、3.5リットルのV6ガソリンモデルや、3.0リットルのV6ターボディーゼルモデルとほぼ同じ性能を実現した。
F700ではガソリンエンジンとディーゼルエンジン――両方の性能を合わせた「DIESOTTO(ディゾット)」を搭載し、低燃費を実現したのが特徴だ。CO2排出量は1キロあたり127グラム、これはコンパクトクラス(排気量1.5リットル以下)のディーゼル車並み。燃費は1リットルあたり18.8キロで、このクラスでは低い値を実現した。ダイムラーAGのトマス・ヴェーバー取締役は「目標はガソリン車の燃費をディーゼル車と同等に高めることです。この新しいエンジンは、その目標に向けた大きな一歩」と話している。
2つめは、2つのレーザースキャナーによって、道路の状態を事前に認識することだ。もし路面が凸凹していても、瞬時に察知し、その状況に応じてサスペンションを調節する。このサスペンションの技術は世界初で、「車に目を与えたようなもの。これによって走行の快適性が高められる」(広報)ことを強調した。
3つめは車内のスイッチを大幅に減らしたことだ。カーナビやオーディオなどによってボタンが多くなり、走行中の危険が増す怖れがある。そこでカーナビの目的地設定の入力を「会話」で行えるようにした。
会議室のように使えるF700
こうした3つの特徴のほか、高級車らしく居住性にもこだわりがあり、全長5.18メートルのボディに広い室内を備えた。後方の座席は逆向きに調節することで、会議室のように利用することもできる。
ベンツの長期的なテーマに「未来へのロードマップ」を掲げている。それは燃費にすぐれ環境に優しく、安全で快適さを実現することだ。「F700は安全性と快適性を追求するため、車内のスイッチを減らした。そして、ディゾットというエンジンを搭載することで、CO2排出量を削減し、地球環境に優しい車が完成した」(同)と話す。数年後、ベンツからも「高級車なのに低燃費」といった車が販売されるかもしれない。
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