最終回 決算処理を比較する:パソコン好きが青色申告を体験してみると?(2/7 ページ)
税金のキソから節税、各青色申告ソフトのインストール、さらに各ソフトへの伝票入力と進んできた今回の短期集中連載。最終回は入力したデータを元に、申告のために必要な決算処理の出来を見ていこう。
決算に向けて行う、4つの作業
さて、決算に向けて行う作業は、個々の状況にもよるがほぼ次の4つだ。
- 家事関係費の案分
- 固定資産の減価償却
- 決算書作成
- 確定申告書作成
それぞれの内容を簡単に説明しておこう。
家事関係費の案分
個人事業主の場合、私的な費用と仕事の費用がどうしても混じってしまう。経費として認められるのは、あくまで仕事の部分だけだ。自宅で仕事する場合の家賃や電気代や電話代、車を仕事とプライベートで共用する場合のガソリン代などが代表的な家事関係費だ。すでに1年分の電気代が経費として伝票入力されている場合、その中から、家事使用分を最後に経費から引き算する必要がある。
例えば年間の電気代が11万5000円、家事使用の割合が60%だったとしよう。
年間計 | 家事割合 | 家事使用金額 | |
---|---|---|---|
電気代 | 11万5000円 | 60% | 6万9000円 |
決算時にこの6万9000円を経費から差し引くことになる。青色申告ソフトでは家事と事業の割合を入力すれば、勘定科目ごとに計算して事業主貸として自動的に処理してくれる。
固定資産の減価償却
例えば建物、車のように、長期にわたって使用するものは固定資産となる。このような資産は、年々価値が減少し、耐用年数を経過したころには使えなくなったりする。これらの資産を購入した場合、購入した年の経費としてではなく、数年にわたって分割して経費とするのが減価償却だ。資産ごとに耐用年数が決められていて、鉄筋コンクリートの事務所は50年、車は6年、軽自動車は4年、テレビは5年、パソコンは4年、カメラは5年などとなっている。耐用年数が1年未満、または取得価額が10万円未満の資産はその年の経費にできるので、目安としては10万円以上のものが対象となる。
減価償却の方法は、もともと定額法、定率法などと処理方法が分かれている上に、2007年(平成19年)4月から減価償却制度の改正が行われたので、さらに複雑となっている。
個人事業主の場合、届けを出さなければ定額法で処理することになる。平成19年3月以前に購入した資産は取得金額の90%が償却の基礎金額だったが、4月以降に購入した資産は100%――つまり全額が償却の対象となる。平成19年3月以前に購入した資産と、4月以降に購入したものを定額法で比較すると以下のようになる。
取得金額 | 償却の基礎になる金額 | 1年目 | 2年目 | 3年目 | …… | |
---|---|---|---|---|---|---|
旧定額法 | 300万円 | 270万円 | 45万円 | 45万円 | 45万円 | …… |
定額法 | 300万円 | 300万円 | 50万円 | 50万円 | 50万円 | …… |
新しい減価償却制度では、ざっと1割ほど経費で落とせる額が増えることになり、お得になった。ちなみに今回の減価償却制度の改正は40年ぶりの大改正らしい。
減価償却には特例も多い。取得価額が20万円未満の資産は、3年間に分割して取得価額を経費に算入できる。例えば18万円のデジタル一眼レフカメラは、通常なら5年に分けて経費算入するが、6万円ずつ3年で償却できることになる。これを一括償却と呼び、青色申告ソフトでも「一括償却」の選択肢が表示される。一括と聞くと1年で一気に償却できそうなイメージがして初心者にはまぎらわしい。
個人事業主や中小企業者が、2008年(平成20年)3月31日までに取得した30万円未満の資産は「少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例制度」により、購入した年に一気に経費算入することができる。先ほどの18万円のデジタル一眼レフなら18万円がすべてその年の経費にできる。ただし、損金算入できるのは年間合計300万円以下という限度がある。青色申告ソフトでは「即時償却」や「少額」の選択肢が用意されている。
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