FeliCaはどうやって作られるのか――豊里事業所・工場見学記(3/3 ページ)
日本や香港の交通乗車券、Edyやnanacoといった電子マネーとして、我々の生活に浸透しているFeliCaカード。そのほとんどを製造しているのが、宮城県にあるソニー豊里事業所である。FeliCaを製造する工場がどのようなところなのか、そのようすをお伝えする。
製造設備を開発する能力が大きな優位性
実際のFeliCa製造工場を目にすると、豊里事業所が掲げる「クオリティとセキュリティ」という強みが、まったく誇張ではないことが分かった。また、FeliCaというと電子デバイスの印象が強いが、実際に「FeliCaカード」という製品にする段階では、化学製品を作るようなノウハウを必要とする微調整が多いことにも驚かされる。
「磁気テープ関連製品とFeliCaカードは、『ケミカルプロダクツ』という点では類似性があるのですよ。その上で我々の優位性を鑑みますと、磁気テープ関連製品を作っていた時代から設備の内製率がとても高く、自前の設備が作れるということがあげられます。生産設備から検査設備まで独自開発する能力を培ってきている。これがFeliCaという新しいジャンルの製品を生産する上でも生かされました。ここがトータルでやっていく、というソニーの強さですね」(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス・フェリカカード事業室室長の西條俊文氏)
電車・バスの乗車券から電子マネー、家やオフィスの鍵まで、人々の生活の重要な部分を支えるインフラになったFeliCa。“幸せのカード”の由来を持つFeliCaカードは(参照記事)、強固なセキュリティ体制の下で、最先端の製造技術と人間の“手と目”によって作られていた。
FeliCaカードの製造工程
一見、普通のプラスチックカードに見えるFeliaカード。しかし、磁気ストライプのカードなどに比べると、中身はかなり複雑な作りである。以下、工場での製造工程を紹介する。
まず、透明シートにアンテナやICチップ、メモリを実装する。カットしたシートを外装材(PET)でサンドイッチのように挟み(=外装ラミネート)、加熱する。始めは柔らかいシート状だったものが、加熱していくと固くなるので、その後カードサイズに打ち抜く。メモリのユーザー領域を分割し、シリアルナンバーを発行すれば、機能的には完成。その後表面を印刷し、断面を整えたら、目視による全品検査を経て完成、出荷される。
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