みずみずしさと純粋思考の野帳スケッチ:郷好文の“うふふ”マーケティング(2/2 ページ)
取材がきっかけで「野帳」にハマッてしまった。野帳とはフィールドノートのことで、本来は測量技師などに作られたもの。初めは真似をして使い出し、ネタや仕事の思いつきをこのノートに書き留めているうちに、野帳の魅力に気付いた。それは……?
野帳の定番、2つのスケッチブック
野帳/フィールドノートとして、定番で入手しやすいのはコクヨとオストリッチダイヤの測量野帳。本来は測量技師や土木技師、工場技術者向けに作られたものだ。
どちらの会社にもバリエーションがあるが、安価で代表的な商品がこの2つ。コクヨ「SKETCH BOOK」(ハードカバーで80ページ、178円)、オストリッチダイヤ「Sketch Book」(ソフトカバーで68ページ、130円)。どちらも使ってみたがコクヨのハードカバー版が手にはなじみやすい。
コクヨは手にぴったりサイズ(160×90ミリ)でどこにも馴染む薄さ(6ミリ)、平坦・一面の見開き面積、薄めの3ミリ方眼の奥ゆかしさ、しっかりのハードカバー。国産の軽薄短小メモや人気の輸入メモも忘れて、40数年生産され続ける名品にほれた。最近21円値上がりしたが、これで178円。もちろんオストリッチダイヤにもハードカバー版はあるので、両方試してもらいたい。
マーケティングを“野帳する”
筆者の野帳の使用は“野”ではなく、もっぱら電車の中や道ばた。事実の記録というより、ネタや仕事の思いつきを書き留めるために使いだした。
筆者の場合、メモのテーマは行列だ。例えば並ばせたい――お待たせしてすみません、という供給者側の軸と、のんびり――並ばなきゃ、という消費者側の軸で行列ポジショニング図案を作る。そして「あーでもない、こーでもない」と思考をメモするのだ。そもそもマーケティングとは観察することでもある。
次の図は7月1日に目撃したJR名古屋タカシマヤのクリアランスセールの行列のスケッチだ。
メモには「女性比率98%(現役オンナ比率80%)、混乱なし、ブランド別にクリアランス開始日のずらし(あざとい)、限定品販売は3階(ダッシュ?)、1メートル行列当たり適正人数は何人だろうか?」などと書いている。観察が高じれば、いつか行列コンサルタントになれる(かな?)。
野帳を持って看板やポスター、広告やPOP、行列や閑古鳥など、目に入るモノやデザインや事象を文字や絵で記録しよう。記録が溜まればそれを愛するようになるかもしれない。
野帳の魅力は“記録を愛でる”こと
シーンを観察して、野帳に切り取り、書き足して保存し、あとで振り返る。野帳の魅力とは“記録を愛でる”ところにあるのだ。
一般の手帳ではスケジュールやTo Do Listsなどよけいな情報が邪魔して、純粋思考をさせてくれない。大きなノートでは余白ばかりになる。ちっちゃなメモ帳は備忘録に過ぎない。記録を愛でるにはA6(105×148)かB6(128×182)ぐらいの野帳がちょうどいい。
自分で愛でるだけではなく、その愛の記録を“同類”――岩相や鳥に関心を持つ人にも伝えたい。記録が社会の役に立てば本望だ。そして未来の自分に伝えるのがメインだろう。過去の野帳を振り返り、緻密さや地道さに衰えがないか、好奇心がボヤッとしていないか、チェックができる。心のみずみずしさこそ野帳の効用である。
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