“成さざるの罪”とは? スティールとソトーTOB合戦の背景(3/3 ページ)
2003年12月、東証2部上場のソトーにTOBを仕掛けたスティール・パートナーズ。その後、ブルドックソースへの買収劇で“グリーンメーラー”と認定されたスティールだが、なぜ染色加工業のソトーを買収しようと試みたのだろうか?
怠慢経営と説明不足の“成さざるの罪”問われた当事者は……?
ちなみに現在のソトーであるが、2006年3月期(実績)は、総資産額322億円に対して、現預金、有価証券そして投資有価証券の合計額が256億円と、総資産額の79.7%に及んでいる。一方、株主資本は237億円(株主資本比率は73.7%)。資本金31億円に対し、利益剰余金は133億円となっている。2006年3月末の株価終値は1481円、株式時価総額は227億円であった。同期の年間売上高は81億円と2003年と比べると落ち込んではいるが、営業利益、経常利益、当期純利益はそれぞれ約7億円、10億円、6億円と、依然として高収益だ。同期の営業キャッシュフローは9億円で、有利子負債は依然ゼロである。
TOB合戦終結時の配当に関する公約のその後はどうだろうか。
ソトーの1株当り年間配当金は、2004年度は200円、翌年は150円、翌々年は150円――3年間の合計で500円であった。利益剰余金そして現預金を取り崩しながら、公約通り高配当を続けた。そして、公約明けの2007年3月期に、1株当たりの配当金を38円に減額する旨を、発表していた(実際には期末に16円増配し、年間配当金は54円であった。今後は年間54円配当を継続するとのこと)。
なお、ソトーの馬渕社長(当時、現・相談役)は2004年2月5日、日本経済新聞社のインタビューで経営理念や株主への説明について、こう答えている。
「株主だけでなく従業員、取引先などすべてのステークホルダー(利害関係者)と利益を分かち合う経営を目指している」
「株主だけに利益を厚く配分するわけにはいかない」
「将来の投資や不測の事態に備えて利益を蓄積してきた。説明責任を果たしてこなかったと言われれば、そうかもしれない。ただ繊維は成熟産業であり、投資家などに説明したからといって株価が上がり、今回のような買収劇が起こらなかったとは思えない」
さて、この馬渕社長のコメントを皆さんはどのような気持ちで読んでおられるであろうか?
企業に投資しリターンを期待し、期待以下ならば経営者に問う――そうした株主の視点も持って、考えていただきたい。
斎藤忠久(Tadahisa Saito)
東京外国語大学英米語学科(国際関係専修)卒業後フランス・リヨン大学経済学部留学、シカゴ大学にてMBA(High Honors)修了。富士銀行(現在のみずほフィナンシャルグループ)を経て、富士ナショナルシティ・コンサルティング(現在のみずほ総合研究所)に出向、マーケティングおよび戦略コンサルティングに従事。その後、ナカミチにて経営企画、海外営業、営業業務、経理・財務等々の幅広い業務分野を担当、取締役経理部長兼経営企画室長を経て米国持ち株子会社にて副社長兼CFOを歴任。
その後、米国通信系のベンチャー企業であるパケットビデオ社で国際財務担当上級副社長として日本法人の設立・立上、日本法人の代表取締役社長を務めた後、エンターテインメント系コンテンツのベンチャー企業である株式会社アットマークの専務取締役を経て、現在エムティーアイ(JASDAQ上場)取締役兼執行役員専務、コーポレート・サービス本部長。
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