あなたの妻はなぜ衝動買いをするのか?:郷好文の“うふふ”マーケティング(2/2 ページ)
これ欲しい!――そんな刹那の感情に突き動かされる「衝動買い」。人はなぜ衝動買いをするのか? 衝動買いの心理を図解する。
衝動買いあれこれ
衝動買いには、目を見張ったり、フフンと笑えたり、じりじりするものもある。
犬や猫とは出会いだ。ペットは高価な衝動買いの代表例。我が同僚Cherryさん、1匹目の猫は計画的に購買した。2匹目のときは計画と衝動が混じって「この子にしよう!」と決断。そして3匹目はまさに衝動だった。
ある日、1匹目の猫のエサのためにペットショップに立ち寄った。何げにケージに目をやると、猫と目が合った。「あ! この子!」と、ひと目ぼれだ。売約済みになればもう2度と会えないので、ケージの前で手付金が渡された。衝動買いされた猫は今、衝動的に舌を出している、のかもしれない。
同僚YUKAさんは旅先の上海で、ウインドウの前で衝動に包まれた。ウインドウの中の“馬車”はさんぜんと輝いていた。「これは出会いだわ!」と言いながら、しっかり値切って買った。
筆者は思わず「これいい!」と叫んだが、多くの人は絶句したこのバッグ。このバッグを持つ彼女と共に上海路を歩けば、自転車の群れが道を開けてくれる(そんなことはないか)。
しかし先日、近所のスーパーで見かけた衝動購買には絶句した。30代の夫婦で子供1人の3人、カゴはテンコ盛りだ。時間がかかるなと思いつつ、後ろに並んだ。カゴの全品目は「48XX円」だったが、支払う代わりに一度買ったモノを「これいらない、あれいらない」と戻し始めた。アイスを戻し、冷蔵ピザを戻し、シャウエッセンを戻し……。手持ちは3XXX円で、その金額になるまで取り消した。
1品や2品なら分かるけど、ざっと1000円分以上。まるで往年のTV番組『目方でドーン』のようだ(奥さんの目方で買い物競争をする番組)。彼らは“衝動詰め”の確信犯なのだろうか?
衝動買いを図解しよう
バーキン(100万円以上するエルメスのバッグ)を衝動買いできる人は幸せだろうか? 「いくらお金があってもね」と貧乏人ほど言うけれど、金持ちでも貧乏人でも、衝動買いの基本は時間とお金だ。
そこで衝動買いを購買額と衝動処理時間で表現しよう(図3)。縦軸は「いくらの衝動買いができるか」という消費可能額を表し、上はバーキンで下は100円ショップ。横軸は「衝動買いの意思決定処理時間」を表し、右は瞬間購買、左は“意思決定まで無限”に時間がかかるということ。猫の衝動のお値段は10数万円、バッグの衝動は千何百元、購買詰め衝動は48XX円、猫とバッグの衝動処理時間は数秒、衝動詰めは20分くらいだろう。
衝動を表すにはこの2軸に加えて3次元の軸が必要である。それは「これこそ一期一会だわ」を深さとするタテ軸である。衝動とは“それにほれること”、つまり“一期一会深度”が関わっているからだ。
一期一会を深めるヒント
さてここで立場を変えて、衝動買い“させる”売り手の視点で見てみよう。この“逆円錐”を長くする一期一会を深めるには、どうしたら良いだろうか?
陳列量を抑える(レア感を出す)、陳列の鮮度を高める(場所を変える)、POPの文句を変える(ウケるスローガンは人それぞれ)などは基本だが、出会い作りにはやはり重要。ネットショップならランダムなシャッフル、写真を変える、説明文を変える、カラーを変えるのもいい。
商品を見つめるお客さまの衝動にフタをしてはならない。フタとは“売らんかなの店員”のひとことである。「お似合いですよ」はまだしも「今買わないとなくなります」という脅し文句は、むしろ衝動のフタを閉じさせる。強引に買わせてもあとで後悔させ、その店には2度と近寄らなくなる。
衝動買いのトランス状態にあるお客さまは、放っておけばいいのだ。ニッコリ微笑んでいるだけでいい。勝手に衝動に落ちてくれる。衝動の持続こそが消費の快楽、顧客満足なのだから。
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