ミクシィの株は高い? 安い? 企業価値で考える:山口揚平氏が教える“会社の本質”(2/2 ページ)
2006年9月に上場したミクシィは売上を一気に増加させ、2008年3月31日の時価総額は約1500億円。この価格を見て高いと思うか? それとも安いと思うか? ブルー・マーリン・パートナーズの山口揚平氏は「それを判断するのには、ミクシィの企業価値を見極める必要がある」と指摘する。
次の戦略が見えてこないミクシィ
それではミクシィの株価は「割高」といえるのだろうか。PVをもとにした利益成長の可能性や、同業他社の比較からは、ミクシィの株価は「割安」とはいえなかった。「しかしミクシィのビジネスが進化し、発展する可能性があれば、株価も『妥当である』といえるかもしれない。実はミクシィの売上や利益率などは、2000年当時のヤフーと似ているのだ」
ヤフー自身は継続的にビジネスモデルを進化させてきた。ミクシィはどうだろうか。まずはキャッシュフローを見てみる必要がある。
例えば楽天のキャッシュフローを見ると、2000年から2006年まで、営業キャッシュフローが出ていない。増収増益を繰り返してきたものの、本業ではキャッシュを稼ぐことができなかったのだ。上場時の資金をM&Aに回し、会社の規模を大きくすることに力を入れていたため、本業では稼げなかった。
一方のミクシィは営業キャッシュフローは出ており、本業で稼げている。「しかし2007年3月期には、投資キャッシュフローが出ていた。有価証券報告書を見てみると、『国債』に投資していることが分かった。国債を買うということは、資金を“寝かせる”状態。ミクシィは事業投資をしておらず、次の戦略が見えてこないのが課題だ」
企業を分析する上で、山口氏はキャッシュフローを重視する。「利益が出ているから、『この会社は大丈夫』という考え方は危険。利益は出ているものの、“お金がない”という企業は存在する。なので利益ばかりを見るのではなく、お金の流れを映し出すキャッシュフローを分析することが大切。ミクシィの場合、キャッシュフローは創出されているが、国債を買っていることが問題だろう」
国債に投資しているということは、次の明確なビジネスモデルを描き切れていない、ということにもつながる。「企業がどういったビジョンを描いているか、という点は企業分析をする上で欠かせない。例えば『時価総額○兆円を目指す』というのは、戦略でもなんでもなく、ただのノルマに過ぎない」と指摘する。
最後に山口氏は、理想とする企業の姿について語った。「常に課題を見直しつつ、丁寧に事業を拡大している企業が理想。ある医療メーカーでは痛くない注射針を取り扱い、次にカテーテル(検査などを行うために、体内に挿入する柔らかい細い管)を開発するなど、少しずつ事業を拡大していった。株主至上主義でもなく、従業員におもねるでもなく、社会、従業員、顧客、投資家などのすべてのステークホルダーと、できるだけ誠実に接することが肝となってくるのではないだろうか」と話した。
→スターバックスに“死角”はあるのか? ポイントは米国本社との関係(前編)
→本記事(後編)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
スターバックスに“死角”はあるのか? ポイントは米国本社との関係
「会社の価値の源泉」とはどういう意味だろうか? 企業の決算書は読めても、“価値”については考えたことがない人も多いだろう。数字には表れない価値をどのようにして見抜けばいいのか、ブルー・マーリン・パートナーズの山口揚平氏に語ってもらった。
よいベンチャーを見抜く4つのポイント
一般に、1000社あるベンチャーのうち、中堅企業まで育つのは1社といわれる。成長するベンチャー企業には、共通する特徴があるのだろうか。ブルー・マーリン・パートナーズの山口揚平氏は「良い会社かどうかは、従業員3人と話をすれば分かる」と話す。その理由とは……。
誰もが認める美人より、磨けば光る子を探せ――山崎元VS. 山口揚平の投資対談(前編)
投資に関係する仕事をしてきた人は、どのような目線でマーケットを見ているのだろうか? そこから個人投資家にとって、投資のヒントが転がっているのかもしれない。山崎元氏と山口揚平氏――世代の違う2人の対談を3回にわたってお送りする。- 山口揚平の時事日想バックナンバー
