クルマ×公共交通連携の第一歩は、交通IC&ポイントの活用から?:神尾寿の時事日想
小容量だが移動の自由度が高いクルマと、大容量輸送が可能でクリーンな公共交通をいかに連携させるか? 欧州の規制モデルとも違う日本型モデルを実現するために、交通ICやポイントシステムのノウハウが役立つのではないだろうか。
1月27日、JR東日本とパーク24が、パーク24が運営する会員制サービス「タイムズクラブ」の「タイムズポイント」を、JR東日本の「Suicaポイント」に交換するサービスを開始した(参照記事)。詳しくはニュース記事に譲るが、ポイントの交換レートは「300タイムズポイント=300Suicaポイント」。交換単位は300タイムズポイント以上、300タイムズポイント単位となる。100万人以上の会員を持つ駐車場ポイントサービスと、鉄道会社の交通IC系ポイントサービスの連携は全国でも初めての取り組みとなる。
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交通ICの「割引」「ポイント」がインセンティブ
環境汚染や渋滞の緩和のために、都市部へのクルマ流入を抑制する。この命題に対して、欧州の一部都市ではトランジットモール(自家用車流入規制)やロードプライシング(都市部への乗り入れ課金)など流入規制によって「クルマを都市部から締め出し」、一方で、トラムや自転車シェアリング、電車・バスなど公共交通を使いやすくする施策で臨んでいる。パーク&ライドやカーシェアリングの利用も着々と進んでおり、“クルマと公共交通の共存”という新たな交通システムの姿が見え始めている(参照記事)。
翻って日本を見ると、トランジットモールやロードプライシングの議論はあれど、国内自動車産業の大きさや都市の道路構造の違いなどもあり、行政による“都市からの自動車締め出し”という強硬な規制は難しい。特に昨今は自動車販売不況であり、都市部であれど「クルマ利用規制」という施策は自動車業界から強い反発を受けそうだ。しかし長い目で見れば、環境負荷の軽減や都市交通の効率化の観点で、やはり「クルマと公共交通の連携・共存」への模索は重要である。
そのような中で、SuicaやPASMOなど日本で幅広く普及する交通ICを使った割引サービスや、駐車場事業者と鉄道会社のポイント交換のスキームは、“クルマと公共交通の連携・併用”を促すインセンティブを作る下地となりえる。今回のタイムズポイントとSuicaポイント連携は今のところ単なるポイント交換だが、「電車への乗り換えでボーナスポイント付与」といった発展も考えられるだろう。
小容量だが移動の自由度が高いクルマと、路線はあるが大容量輸送が可能でクリーンな公共交通をいかに連携させるか。日本で普及・発展した交通ICやポイントサービスのインフラやノウハウを活用すれば、欧州型の規制モデルとは異なる「クルマと公共交通連携」の道筋が見えるかもしれない。この分野のサービス開発が、積極的に進むことに期待したい。
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