“カタログ語”から抜け出そう――商品紹介の秘けつとは:郷好文の“うふふ”マーケティング(2/2 ページ)
最近、カタログに書いてあるようなことしか語れない営業マンが増えているという。そこで商品語りの達人、スミ利文具店の藤井稔也さんに商品を紹介するコツを聞いてきた。
カタログに掲載するのではなく、買ってほしいから書く
――どんな文章を心掛けているのですか?
藤井 文章については完全に素人でして、もちろん何らトレーニングはしていません。下手でダラダラと長い。文章の長さと頭の悪さは確実に比例すると思います(笑)
そう謙遜する藤井さん、自前サイトの気楽さで文字数制限もなく、起承転結も考えずひたすら書くと言う。商品への愛情がなければここまで書けない。“自分以外の誰かに(その良さを)分かってほしい”から書くという。
近頃は、うまく体裁を整えるのが最優先で、カッコ良すぎる文章ばかり。「メーカーのカタログは『品物を売るための文章』『買って欲しいための文章』『分かって欲しいための文章』ではなく、『カタログ掲載という仕事をこなすための文章』になっているものが非常に多い」と彼は嘆く。確かに文具のようなコアな衝動買い商品は、読みたい人は重箱の隅まで読み抜く。あっさり紹介は単なるガイド、労苦をいとわずに書かれたこってり語りが“買い”につながる。
「いくら自前のサイトでも、当事者のメッセージが伝わらないサイトは『下手』と言うより、何だか『止まった』『無機質な』『寂しい』『やっつけ仕事』な感じがします」(藤井さん)
カタログやWebサイト制作、外注しても社内外注しても、そこに当事者のメッセージさえ伝われば「上手い」宣伝になる、と彼は語る。文章はヘタでも、日々書き続け、より良い表現に修正すれば評価する人が増えるという。藤井さんのアドバイスをまとめてみよう。
- 自分が見たい角度・見たい部分の写真を自分で撮影する
- 体裁(文の長短、形式だけの起承転結)にこだわらない
- 「分かって欲しい」「分かってくれるかな」と考え続けて書く
- 書いた後も気付きがあれば、随時修正する
- 当事者ならではの真剣なメッセージを伝える
語りは“真ん中にあること”を見抜くことから
なぜ語りは難しいのか? 面倒だから? 知識が足りないから? 効率が悪いから?
全部YESだが、語れない根本原因は“主語が自分じゃない”から。その商品の真ん中にあることを見抜けるか見抜けないか、「見抜こう」の緊張感があるか、「見抜けた」の充実感があるか。それが語りの原点である。
当事者意識が薄いと「今ならお買い得です」と在庫を縮小したい売り手の都合を語る。「とても人気がある商品です」は“販売実績”語りに過ぎない。開発者や企画者の“代理人意識”で語れるはずがない。見抜くから撮影ポイントが定まり、伝えたいことが語りになり、主語のあるメッセージになる。
だがしっかり見抜けば欠点も見えてくる。欠点をどう語ればいいか? 藤井さんは「少々惜しい点(悪い点ではない)がある商品のほうが、逆に紹介しやすいですし、そこをきちんと説明すれば、むしろ安心しておすすめできます」と語る。
惜しい点も語れば、お客さまの不安を取り除き、売り手の良心も確保される。だが“惜しい点”語りだけだと「惜しいな、改良品を待つよ」と言われるのでご用心。
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