凄腕弁護士に聞いた! “勝てる”トークのポイントは3つ:現役東大生・森田徹の今週も“かしこいフリ”(2/2 ページ)
弁護士として個人の味方となり、青色LED訴訟では一審で200億円の賠償金を勝ち取った升永英俊氏。そんな凄腕弁護士の升永氏に説得力のあるトークをするための秘けつを尋ねたところ、3つのポイントを教えてくれた。
自分が常に公正だという印象を相手に抱かせる
例えば、「一見、論理に穴はないが、自分に都合の良いことしか言わない」という人の主張を、あなたは支持できるだろうか? 「支持できない」という人は少なくないだろう。当然のことではあるが、言葉はそれぞれが独立して受容されるわけではなく、文脈や話者の印象によって受け取り方は変わってくるものだ。
それでは第三者を説得するための議論で、しばしば我田引水的になりがちな主張を、第三者に公正なものだと感じてもらうようにするためにはどうすればいいのだろうか? 升永氏の答えは「敵に塩を送ることだ」という。
「黙っていれば議論を有利に展開できるような自分の弱みを見つけたら、相手が反論できるようにその弱みをきちんと指摘することが重要。もちろんバランスの問題で、自分にとって致命的な弱点は黙っていないといけないこともあるんだけど……そこが弁護士の腕だね」
相手に一目を置かせる
同じ主張でも、一介の学生が言う場合と、歴戦のビジネスパーソンが言う場合とでは重みが違う。このコラムで筆者がつくづく感じていることの1つである。議論でも同じなのだが、その際には実績や肩書きといった前評判だけではなく、議論の中で尊敬を勝ち得るような言動や振る舞いをすることが重要だという。
具体的には「議論の中で、相手に何かを積極的に教えていくことが肝要だ」と升永氏は言う。一瞬でも「教える−教えられる」という構造を作り出せば、その瞬間は相手の師になれる。自分が上位の立場となる構造を作り出せば、相手は一目を置かざるを得ないということだ。
自分の弱みから逃げ出さない
往々にして、人は自らの弱みから目を背けたがるものである。しかし議論の中では、弱みから逃げようとしたところで追撃されるのがオチである。
だから、自らの主張を組み立てる上で重要なことは、「責められるであろう論点を把握し、事前にその反論への反論をきちんと用意しておくことだ」と升永氏は言う。二手三手先を読んで論理を組み立てていくところは、さすが敏腕弁護士というところだろう。
升永氏が目指す社会の変革
最後に升永氏に何か読者に伝えたいことがあるかと問うと、「正直かつ勇気がある人であれ」という言葉が返ってきた。司法の場で正義をなせば実績は後から付いてくる、という升永氏の生き方を体現した言葉だろう。
例えば現在、升永氏が取り組んでいるライフワークの1つに「1票の格差」の是正がある。地域ごとに違う1票の重みの違いを平準化するために、現状の公職選挙法を合憲だとする最高裁裁判官を衆院選と同時に行われる国民審査で不信任の票を入れようというキャンペーンだ。
升永氏はこれを“変革(CHANGE)”と呼んでいるが、一財を成した後の社会貢献として、自らの専門的知識を惜しげもなく使って社会に挑むこの姿勢は是非とも見習いたいものだ。まあ、筆者の場合は、一財を成すところから始めないといけないのだが……。
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