Amazon.comが屈した史上最強の顧客主導型企業「Zappos.com」(2/2 ページ)
米国時間7月22日にAmazon.com(アマゾン)が発表したZappos.com(ザッポス)の買収。ザッポスは米国で靴のネット通販という市場を切り開いたパイオニア的存在。アマゾンは何を目的に買収したのだろうか。
ザッポスのCEOトニー・シェイが自らのブログで買収について書いているが、そのブログにはアマゾンのCEOジェフ・ベゾスが今回の買収について語っているビデオ映像が掲載されている。その中でベゾスは、ザッポスの徹底した「Customer Obsession」に対して彼自身がいかに深い尊敬の念を抱いているか、そして同様に熱烈な「Customer Obsession」を理念として掲げる両社が、今後、手と手をとって成長していくことがいかにエキサイティングなことであるかを熱っぽく語っている。
Video from Jeff Bezos about Amazon and Zappos
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買収とは言っても、ザッポス・ブランドがアマゾンに統合されるということではなく、ザッポスはザッポス・ブランドを維持し、既存の経営陣のままで独立した事業単体としての運営を行っていくという。ザッポスのカルチャーやサービス・ポリシーも、既存のままを維持していくということが重ねて強調されている。
前述のブログでCEOのトニー・シェイも、「『買収』というより、『アマゾンとザッポスが、仲むつまじい関係になった』という方が真実に近い」とジョークを飛ばす。
ザッポスはアマゾンに勝てないから買収されたのではない。むしろその反対だ。「Web時代における究極の顧客エクスペリエンスの実現」について、ザッポスが創立以来10年をかけてつちかってきたノウハウをこの買収によってザッポスから学ぶ、取り入れるというのが、アマゾンの本意であると私は見ている。
アマゾンは年商190億ドルのオンラインの巨獣。かたやザッポスは、2008年に10億ドルを超えたばかり。しかし、規模では割り切れないすごさがザッポスにはある。
ネット元年から10年を経て、テクノロジーの限界が見えてきたこの時代に、いかにして究極の顧客エクスペリエンスを創り出していくのか。そのカギは「人」の力にある。アマゾンにとってはその答えがザッポスにあった。ザッポスは巨獣アマゾンが屈した、史上最強の顧客主導型企業なのだ。(石塚しのぶ)
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