餃子の王将の“王道”マーケティング(2/2 ページ)
これまでさまざまなマーケティング方法が実践されてきたが、近年、消費者に手の内を見透かされるようになっている。そんな中、王道のマーケティングを貫いて成功しているのが餃子の王将だ。
王将の“王道”マーケティング
プレースメントというPR手法があります。
アパレルブランドなどが自社製品をテレビの番組や映画などに提供し、さりげなく視聴者に商品告知をする方法です。クレジットは出ないことがほとんどですが、時計の盤面が画面に大写しになったことでバカ売れしたスイスのミリタリー時計など、実は結構行われているものです。
じゃあ王将はどうしているのでしょうか。ドラマに出すという強引な手もあるかも知れませんが、実に巧妙な露出と展開をしています。つまり「あざとさ」が無いのです。
ネットで素人にもマーケティングメソッドが知れ渡るようになりました。しかし同時にその底も見えてしまい、かつて1980年代のようなマーケティング神通力は衰退していると感じます。そんな中、堂々と商品・ブランド告知を進める王将。時代をしっかり読めていることが立証されているのではないでしょうか。
王将は月間億単位の「割引券」を路上で配布し、店では何がしかの「特別提供メニュー」があり、やることなすこと、すべてがオーソドックス、いやここは敬意を払ってラテン語で「オルトドクス」と呼びたいですが、それが良くも悪くも「素」を暴きだす、現代の風潮には合うのではないでしょうか。
TBSラジオ「伊集院光の深夜の馬鹿力」でDJ伊集院氏が語ったところによると、テレビ番組制作予算がないので王将に賞品のスポンサードを頼んだところ、その番組のレーティングやターゲット・コンセプトではなく、「お宅の番組は頑張っている若手を応援していますか?」と聞かれたとのこと。キー局の番組やプライムタイムに出られるわけの無い無名芸人・若手オールスターズで成り立つ番組だということを伝えたところ、「頑張る若者を応援するのが王将なんで、それなら商品券出します」とあっさり交渉がまとまったそうです。
真偽はともかく(伊集院氏がウソ付く意味がないので真実でしょうが)、こんなことをされたらそりゃあ伊集院氏、ラジオでしゃべるに決まっていますよね。しかも伊集院氏の深夜放送ターゲットオーディエンスは明らかに、カフェめしやらスイーツとは別世界の住人。それが王将客層じゃないですか。
こうした一連の流れが計算の下で行われているのかどうかは知りません。単なる偶然の可能性もあります。しかしブランドマネージャーやクリエイターやプランナーが頭をひねって出てきたアイデアも簡単に見透かされる時代。クラシック・マーケティングの原点という王道を歩む王将の成功。ドンピシャ王将客層の私としては拍手を送りたい気持ちでいっぱいです。(増沢隆太)
関連記事
- 西の「餃子の王将」VS. 東の「日高屋」……“中華大戦争”が勃発
外食産業の“勝ち組”といわれる「餃子の王将」と「日高屋」が、首都圏の近郊都市で激しい攻防を繰り広げている。地域密着で固定客が強みの王将に対し、お酒も飲める駅前ラーメン屋台がモットーの日高屋。外食不況が吹き荒れる中、“中華大戦争”の行方はいかに? - 「辞めますカード」に効果はあるか?
会社員をやっていると辞表を叩きつけたくなることや、辞表を盾に交渉をしようと思ったことのある人は少なくないでしょう。辞表を会社に出すとどのようなことが起こるのでしょうか? - 外食産業で広がる格差――好調の王将・マック、不調のファミレス
外食チェーンの業績格差が鮮明になっている。低価格で節約志向の消費者の心をつかんだファストフードが好調な半面、家庭で食事をとる家族が増えた結果、ファミリーレストランの売り上げ減少に歯止めがかからない状況だ。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.