セミナー講師VS. 学生――セールストークの現場を見た(2/2 ページ)
受講料20万円のセミナーの参加者を集めるための、受講料5000円のセミナーに参加した筆者。しかし、学生から「20万円のセミナーは高すぎるのでは?」という質問が飛び出して、さあ大変という状況に。そこで、セミナー講師がとった対処策とは……。
学生の反撃
「僕の財布の中身と比べて高いです!」と。私は、思わず笑い出してしまいました。「この学生さん、やるな」と。だって、購買の際の価格決定基準を分からなくさせる質問に対して、明確に基準を示してきたのです! 要するに、「価格の高い安いは、自分の持つお金の量によって決まる!」と。これは、すごいロジックです。確かにその通りでした。
講師の方の顔色が明らかに変わりました。私は笑いが止まりませんでした。で、講師の方もやるなあ、と思ったのは、学生さんにしっかりとヒアリングをかけ、「彼がそのセミナーから何が得られるか?」に焦点を絞って、話を聞き始めたことです。
何と40分の時間をかけました。さすがプロだな、と私は思いました。この500人が次のステップに進むコンバージョンを引き上げる任務を彼は担っているので、当然と言えば当然ですが。
そのヒアリングが終わるころ、学生さんは「こういう技術を得られれば、自分の夢を実現できる!」と笑顔になっていました。そして、若者の未来の成功イメージを会場の方もシェアしました。
良心的な方は1人の若者の話をこんなに親身になって聞くのか、と感心されていました。でも、セールスという観点から見れば、講師の方は親切心で彼にフォーカスして質問したわけではないのです。関心事項を価格から、未来の成功の話に変えたんですね。
講師の方はその後、一切価格に関連する言葉については触れませんでした。素晴らしいプロフェッショナルです。セミナーは、時間を1時間半ぐらい延長して終了しました。こんなに延長してくれるなんて、と喜んでいる人もいました。
でも、違いますよね? セールス技術を知っていると、ハメられることは少なくなりますが、シンプルに物事に感動できなくなるかもしれません。ただ、知らないと、うれしそうに相手のストーリーにはまりこむことがあります。まあ、その(受講料20万円の)セミナーで収入が本当に10倍になれば、それはそれでよいのでしょうけどね。(伊藤達夫)
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