内藤VS.亀田戦が教えてくれた“優良コンテンツ”作りのヒント(2/2 ページ)
ボクシングの内藤VS.亀田戦が43.1%という驚異の視聴率を記録した。この番組コンテンツには“優良コンテンツ(=優良商品)”を作るためのマーケティングノウハウがぎっしり詰まっていることに気付いただろうか?
お客さまは「世界戦」ではなく「ストーリー」を見たかったのだ
ここまで3つの理由を述べましたが、この3つに共通するのは、すべて「お客さま視点」であるということ。お客さまが望んだ改善、お客さまが望んだ分かりやすい構図、そして、お客さまが望む展開。それらはすべて、お客さまが望んだことを愚直に演出しただけのことなのです。
ちなみに、事前の調査では「内藤選手が有利」「内藤選手に勝って欲しい」という声の方が圧倒的に多かったようですが、このことから推測すると、お客様の最大の興味・関心事は、「内藤選手が敵役の亀田選手をどう倒すか」という1点だったと言ってもいいでしょう。
このお客さまの興味・関心の上においては、もはや「世界戦」という冠はこのコンテンツの「スペック」の1つにしか過ぎません。ボクシング関係者に言わせれば、「世界戦」という冠が重要なのかもしれませんが、究極を言えば、それはお客さまにとってはどうでもいいことなのです。
言い換えれば、お客さまはボクシングというスポーツに名を借りた、筋書きのない人間ドラマの「ストーリー」を見たかったのであり、決して「世界戦」だから見たかったのではありません。実際、ほかの世界戦では視聴率10%以下のコンテンツもあるというのが現実です。必ずしも「世界戦」が売りになる時代ではなくなったのです。
作る側の「押しつけたいこと」、消費する側の「望むこと」
放送番組にかかわらず、一般の商品やサービスを作る側は、さまざなな施策や仕掛けをもってお客さまに受け入れられようと必至に努力します。しかし、いまだ多くの商品プロモーションで、作る側や売る側視点の「押しつけがましい広告」が氾濫しているのも事実です。私は、さまざまな企業のコンサルティングを続ける中でそのような広告に出会うと、声を大にして「答えはいつもお客様にある!」とお伝えしています。
担当者がいろいろな施策や仕掛けを考えたとしても、結局最後は「お客さま」が判断するもの。差別化が難しい時代であればあるほど、これからの商品開発には、そんな「お客さま視点」の取り込みが重要だと思うのです。
テレビ番組を例にすれば、始めに「スポンサーありき」「作る側ありき」ではなく、「お客さまありき」で番組を作り、そこに適切な「スポンサー」や「商品」を結びつけるという、スポンサー側にとっても、お客さま側にとっても、最も効果的な方法に立ち返るべき時ではないかと考えています。
さて、あなたの会社ではいかがでしょうか? 商品スペックにこだわりすぎて、「お客さま視点」の商品開発や広告活動をおろそかにしていませんか? もしよろしければ、これを機会にぜひ見直してみてください。
最後に……
こんなに優良なコンテンツをつくったにも関わらず、TBSの決算は赤字転落……。このコンテンツ制作をヒントにして、今後の良い番組作りに生かしてほしいものです。がんばれ! TBS!(小野寺洋)
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