“マーケットイン”で米国No.1のiPhoneアプリに――柳澤康弘パンカク社長が語る『LightBike』開発(3/3 ページ)
世界中で急速に拡大しているiPhoneアプリ市場だが、海外で受けるゲームを出している日本企業はまだ少ない。そんな中、2009年2月に米国App Storeの有料アプリランキングで1位に輝いたのがパンカクの『LightBike』だ。パンカクの柳澤康弘社長は情報処理学会で行った講演で開発の背景を振り返った。
日本らしさからの脱却
柳澤 私たちが重視しなければいけないと考えていたのは、「米国のブロガー、米国のユーザーに刺さるものを作らなければいけない」ということです。なぜならiPhoneとiPod touchは全世界で8000万台近く売れていますが、半分以上が米国のユーザーで、日本のユーザーは3〜5%くらい。そのため、その3〜5%のユーザーのことをあまり考えすぎず、半分以上を占める米国のユーザーのことだけを考えるようにして、「日本のユーザーからどんなに文句を言われたとしても、米国のユーザーが満足するようなものを作ろう」と思っていました。
また、「日本らしさの実現」というのをやめようと思いました。「日本発コンテンツを世界へ」というと、サムライがどうとか、忍者がどうとか、芸者がどうとか、それはそれでもちろんいいのですが、それが米国でメインストリームになれるかというと、多分そんなことはないと思うんですね。もちろん日本のサブカルチャーや伝統文化が好きな海外の方はたくさんいますし、そういう人たちがある程度の数になるのは間違いないと思うのですが、やはりメインストリームとは違っているでしょう。作り手が「日本っぽさを出したい」というのは分からなくはないのですが、それは必ずしもニーズと合致するとは限らないということで、「米国のユーザーが何を求めているのか」ということだけを考えて作りました。
そして、一目で分からないものはNGです。先ほどのランキングページにアクセスしたユーザーが、アプリのアイコンと名前を見て「おっ、面白そう」と思わないと、そこで終わりになってしまいます。ランキングページにせっかく載ったとしてもクリックされずに終わってしまうので、アイコンと名前だけでどういうものなのか分かるようにして、興味を喚起することが重要になります。そのため、そこは非常に気を遣って作りました。
今後の構想は
柳澤 プログラマー1人とディレクター1人で作って、開発期間は2カ月弱でした。宣伝でやったことは、YouTubeにプレイしている動画をアップして、海外のブロガーたちに「こういうものを作ったんだけどブログで取り上げてもらえないか」と直接メッセージを送っただけです。ほかに広告費などは一切使っていません。
流れとしては、2009年1月末に『LightBike』の無料版をリリースして、無料版がランキングの10位以内くらいに入ったタイミングで有料版をリリースしました。無料版は完全に有料版のプロモーションのために作ったので、無料版のゲーム画面に有料版を購入するためのリンクを張っているのですが、そこ経由でユーザーが集まって、2009年2月に米国App Storeの有料アプリランキングで1位を獲得するに至りました。現状で200万ユーザーがいて、多くの方から5つ星の評価や、「非常に面白かった」というレビューをいただいています。
今後の展開ですが、まず1つは『LightBike』の続編です。『LightBike2』というタイトルを開発していて、今年の春くらいにリリース予定です。そして、iPhoneだけでなく、Androidケータイのアプリでも同じになると思うのですが、プロモーションが課題になるので、『LightBike』で得たユーザーをベースにゲーム対戦ネットワーク「パンカクネット」を構築して、アプリ間でユーザーを回遊させて、回遊させている中から継続的に課金をしていくというモデルを考えています。そして、iPhone以外のAndroidケータイやWindows mobileなど、多くのユーザーを抱えるスマートフォンのプラットフォームに対してもゲームをリリースしていきたいと思っています。ケータイ文化先進国、コンテンツ大国と言われる日本から世界の1位を狙っていきます。
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