カシオ、バーゼルで特別仕様のG-SHOCKやOCEANUSを発表:バーゼルワールド2010(2/2 ページ)
カシオ計算機は、スイス・バーゼルで行われた国際時計宝飾展「バーゼルワールド2010」で、G-SHOCKの最上級シリーズ“MR-G”の限定モデルなど、特別仕様の新作を発表。また、開発中のプロトタイプも見ることができた。
欧州マーケティング統括に聞くカシオのブランド戦略
「広告費を大量に使うマーケティングではなく、当社のブランドを理解し、好きになってくれたパートナーが自発的に語ってくれる環境を作る。そのような内面から支持していただけるマーケティング活動を行っています」と語るのは、カシオの欧州法人カシオヨーロッパでマーケティング統括を担当するハラルド・シュローダー(Harald Schroeder)氏だ。
カシオは昨年、G-SHOCKの世界観を表現するクラブツアー「SHOCK THE WORLD」を全世界で展開した。G-SHOCKを愛用しているというヒップホップ界の大御所カニエ・ウエストを招いたニューヨークでのイベントをはじめ、ロンドンやパリ、ベルリン、東京など11カ国18都市で開催され、メディアやマーケットからの注目を集めた。
「SHOCK THE WORLDの開催以降、トレンドショップからの問い合わせが飛躍的に増えました。また、G-SHOCKの名前を登録してあるGoogleアラートの通知が増え、G-SHOCKに関するブログやニュースが毎日のように届きます。ネットを通じて、G-SHOCKファンが語り合う状況を目の当たりにしています」(シュローダー氏)
同氏によると、G-SHOCKのマーケティング活動には、大きく分けて3つの方向性がある。1つ目は、著名人とのコラボレーションモデルやカラーリングのバリエーションを増やすことで、若い世代にアピールするもの。2つ目は、「グラビティー・ディファイヤー(※)」シリーズやMR-Gシリーズに代表される、G-SHOCKユーザーよりも少し上の世代となる30〜40歳代の人に向けた商品のアピールだ。
そして3つ目は、特に重要なテーマとして「DNAマーケティング」と呼ぶ手法を取り入れている。これは、G-SHOCKの耐衝撃性が生まれた背景や、デザインのコンセプト、開発思想などをしっかりと伝えることで、一時的な流行ではないブランドとしての価値や魅力を高めていく戦略だ。
SHOCK THE WORLDは、今年も世界各国で開催される。昨年も開催された主要都市のほかに、今年から販社化されるイタリアのミラノのほか、ワルシャワやモスクワなどが新しく追加される予定だ。
そして、今年のSHOCK THE WORLDでは、G-SHOCKだけでなく、女性向けのBaby-Gも全面的にアピールするとのこと。アンバサダー(親善大使)として、日本では土屋アンナを、ヨーロッパではイギリスの新人歌手ピクシー・ロット(Pixie Lott)を招いたPR活動も展開する。
もうひとつヨーロッパでの重要な位置付けを担う戦略的ブランドが、アナログメタルの「EDIFICE」シリーズだ。EDIFICEは「デジタルによって育ち、成長してきた会社であるカシオが、デジタルの頭脳で開発したアナログの時計」である。
そもそもヨーロッパの時計市場では、カシオの時計はプラスチック製のデジタルウオッチとして、電気製品的な見方や扱いを受けていた。しかし、アナログメタルのEDIFICEブランドを始めたことによって、ヨーロッパ時計市場の8割以上を占めるジュエラー(宝飾品流通関係者)から、時計のマニュファクチャラー(製造業者)として認められるようになった、という経緯がある。
そのEDIFICEは、F1のレッドブルチームとのコラボレーションを継続して展開する。おりしもドイツでは、7度の年間王者を獲得したミハエル・シューマッハの現役復帰などでF1人気が過熱し、注目度は高い。カシオヨーロッパでは、EDIFICEの購入者や販売店に向けて、F1グランプリのチケットが当たるキャンペーンなども企画しているという。
こうしたマーケティング活動を継続して展開することで、ほかのブランドが軒並み落ち込む中、カシオ製品のシェアは拡大を続けている。先ごろドイツで行われた時計の見本市「インホルゲンタ(Inhorgenta Europe 2010)」では昨年比で140%のオーダーを得たという。
シュローダー氏は、「ヨーロッパのマーケットでは、開発思想として“Moving Time Forward”(時間・時計という概念の進化)という言葉を掲げ、インテリジェント・タイミング(知的な時間測定)やスマートデザイン(機能美)を備えた時計としてアピールしています」と語る。単なるファッションブランドではなく、さまざまなイベントやキャンペーン、ショップ、メディアを通じて、その独自の世界観を楽しめることがカシオ製品の魅力なのだろう。
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