コラム
カールスルーエ市の「顔」と「物語」を大切にする街作り:松田雅央の時事日想(2/2 ページ)
日本の各市町村が知恵を絞っている街作り。ドイツ・カールスルーエ市の「顔」と「物語」を大切にする街作りを例として、ドイツにおける中核都市の街作りの手法をレポートする。
どの都市にも顔がある
カールスルーエ市にとっての物語が「神のお告げ」ならば、その顔は「中央広場」になるだろう。街が城壁に囲まれていた時代からの伝統で、広場には噴水があり、広場の両脇に中央教会と市役所が立つ。カールスルーエ市に限らず、街や村は中央広場を核に発達し、商業地区、役所、博物館や劇場などの文化施設もその周辺に集中している。
カールスルーエ市の中央広場にある高さ数メートルの「ピラミッド(下写真)」の下にはカール公爵が眠る。中央広場から見るピラミッドと、その先に見えるカールスルーエ城が、街を代表する風景である。
市民によっては、カールスルーエ城の前庭(下写真左)や城に隣接する植物園(下写真右)を街の顔として思い浮かべるかもしれない
街作りは愛着と誇りから
街の物語や祭りは台本で、街の顔や中央広場は舞台のセット。市民はドラマの中でそれぞれが主役を演じながら自分の街に愛着を感じ、そして帰属意識を持つようになる。街作りに対する市民の関心をかき立て、「自分はこの街の市民である」という誇りを育てるにもこのドラマは大変有効だ。
郷土意識や市民の連帯感をつちかいながら、ほかにはない街の個性を育てていく。「物語と顔のある街作り」のコンセプトは日本の街作りでも参考となるのではないだろうか。
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