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コラム

「海面上昇でツバルが沈む!」の誤解――センセーショナルな報道の罪(2/2 ページ)

リサイクルされたPETレジンを製造過程で用いると、使用エネルギー量と温暖化ガス排出量の大幅削減につながるとの調査結果が発表された。一方、海面上昇の影響で沈みゆく国とされていたツバルの面積が増えているという情報も入ってきた。その2つのニュースから、私たちがどのような態度で環境経営やエコに取り組むべきか考えてみた。

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センセーショナルな報道の罪

 ただ、私がここで問題としたいのは、「地球温暖化により海面は上昇しているか否か」ではなく、リサイクルPETレジンのLCIデータの解明と、ツバルの問題を歪曲し、センセーショナルに取り上げ世論を誘導するというアプローチの違いです。

 いくら人々の関心をひきやすいからといっても、問題を歪曲して誘導してしまうと、問題の原因や課題を誤解し、誤った解決策に右往左往するということになります。もう手遅れかもしれませんが、排水やゴミ処理の適正化や教育による人口抑制など、ローカルな要因に直接取り組むことで、より少ないコストで確実に問題を解決できていたかもしれません。

 環境負荷の削減には異なるアプローチが提唱され、どれが本当に正しいのかなかなか判断がつきません。それどころか、環境負荷削減に対する根拠のない全面的な懐疑論までさまざまな識者から飛び出す始末です。

 環境経営は個々の意思決定レベルでみると、あまりにも考えなければならない要素が多く、分からないことだらけです。

 私たちは問題が大きすぎたり、難しすぎたりすると、思考停止して問題がなかったことにしてしまいますが、それで問題が消え去ることは決してありません。こうした事態から抜け出すには、誇張することなく、問題は問題と真摯(しんし)に受け止め、冷徹にその原因や課題を分析し、そこでできる最善の意思決定をしていくことと考えます。

 そのためには、人々が受け入れやすいよう作られた感動的なストーリーよりも、果てしない道のりですが、LCIのような環境負荷削減についての地道な科学的根拠の積み重ねの方が、環境経営やエコを進めていくには必要と考えます。事実を積み上げること、その時その時の意思決定で最善を尽くすこと。遠回りなようですが、これらが困難な問題を解決するための唯一の近道ではないでしょうか。(中ノ森清訓)

 →中ノ森清訓氏のバックナンバー

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