神保町「古書大入札会」で電子書籍の未来を考えた:郷好文の“うふふ”マーケティング(3/3 ページ)
電子書籍の登場で、古書の位置付けも変わりつつある。東京・神田神保町の「七夕古書大入札会」を見学して、デジタル化による古書流通革新の可能性について考えてみた。
古書流通の新しいビジネスモデル
改めて古書オークションの“ビジネスモデル”を見てみよう。
古書オークションを開催するためには、売り手と買い手が必要である。売り手はたいてい遺族やコレクターらで、買い手は買い付け予算を持つ美術館や博物館、図書館やコレクター。どちらも目利きの古書店主が代理人として入札をする(ちなみに落札手数料は買値の10%)。
現在の古書オークションモデルのメリットは、「プロ対プロなので相場が荒れないこと」「入札価格が比較的ぶれないこと」。一方、デメリットは一般の人に広く知らせることが難しいこと(Web上で1点ずつ閲覧できるが、画像と最低価格情報のみ)。だから参加者が一部のコレクターに限定されて広がらないのだ。
相場が荒れず、もっと広まるにはどうしたらよいか? 1つのアイデアは、目利きを中心とした出品・入札依頼受託のプロセス(図の破線エリア)をデジタル化して、広く頒布できるようにすることだ。
デジタル化は具体的にどのようにすればいいのか? この分厚い冊子を“iPadコレクターマガジン”にして、ヒト・モノ・カネの情報をiPad画面に凝縮したらどうだろう?
出品物が電子画面内で360度回転する。出品物の類似品の過去入札事例(出品数、落札価格など)へのリンクや変動グラフ、当該ジャンルの目利き者情報(入札・落札履歴、得意分野、手数料率)。マガジンを配布すれば、指先1本で、お年寄りコレクターもフツーのオジサンも、古書の流通に参加できる。目利きの育成事業や広告ビジネスもできそうだ。
電子書籍時代の紙事業者のミッションとは、デジタルを使ってリアル書籍に触れさせる機会を多く作ること。書の目利きを真ん中に置いて、偉大な作家を現代っぽいデジタルで結ぶ。作品に敬意を払い、真の価値を広める“ソーシャル・マーケット作り”。リアルのビジネスとITをiPadという生活者コンピュータで結ぶ。そんなコンサルティングを林田さんとやろうとしている。
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