無言の妻におびえる夫――トステム、“機能”を売らない内窓CMの裏側:郷好文の“うふふ”マーケティング(3/3 ページ)
放送界のアカデミー賞とも言われるギャラクシー賞CM部門で入賞した、トステムの内窓「インプラス」のCM。内窓の機能をあえて訴えず、ただ窓に注目させることが狙いのこのCMはどのようにして生まれたのだろうか。
窓を売るのは業界初
内窓製品自体は以前からあるもので新しくはない。その中でも、1日施工や結露、防音や遮熱など訴求したいことはヤマほどあり、競合他社は機能をCMでうたっている。トステムではどうユーザーに訴えるべきなのか? 2人の間でスキマなく固めた広告戦略は“窓を売る”であった。
「窓を売るのは“業界初”です」(石橋さん)
そして、窓の存在を意識させるイメージCMで行こう、と決断。著名なクリエイティブ・エージェンシーTUGBOATを起用し、堤さんに語らせたのが、結露ならぬ心の汗をかく窓、遮断された愛の窓なのである。
もちろん機能説明を省いたわけではなく、コールセンターやWebサイトで手厚くフォロー。こうして広告戦略と製品が一体となった話題のCMが実現した。
次のCM展開は
第4弾CMの制作ウラ話もスリリング。2009年12月に政府が住宅版エコポイントを発表したため、住宅業界には追い風が吹いているが、トステムではすでに3パターンのCMを打ったばかりだった。だが、他社に出遅れるわけにはいかない。とはいえ、人気役者の堤さんのスケジュールが空かない。
こで石橋さんは、「アフレコ・バージョンでいこう!」と決めた。堤さんのスケジュールを30分だけもらって、小さなスタジオでセリフを録音。「窓にさえポイントをくれるのに、オレは今まで君に、何をあげてこれたのかな」――愛もエコもポイント稼ぎということか。以前のCM映像にこのセリフをかぶせて「エコポイント編」のできあがりだ。
さて、次のCMはどんな展開になるのか? 私はまだひと言も喋らない妻が、何を言うのか聞いてみたい。その冷たいセリフで、内窓のガラスが震撼(しんかん)してしまうかもしれないが(笑)。
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