“休日分散化”の先進地域、欧州のバカンス事情を見る:松田雅央の時事日想(2/2 ページ)
日本では観光庁が2012年を目処に計画しているゴールデンウイークの分散化。すでに休日分散化が行われているドイツやフランスではどのように休みがとられているのか、実情を調べてみた。
休日分散化の効能
休日分散化の感想をごく簡単に書くと「仕事上は少々不便だが、休暇を快適に過ごすという点ではたいへん有効」。これが生活者としての実感だ。
例えば夏のバカンスを考えてみると、休日分散化により「高速道路の渋滞緩和」、「列車・飛行機の混雑緩和」「宿泊施設の予約が取りやすくなる」「割高な各種バカンス料金の値下がり」といったメリットが期待できる。一方の観光産業にとっても「40日間のみ極端に混む」より「3カ月半コンスタントな集客が見込める」ことの効果は大きいだろう。
このような効果を期待し、日本の観光庁でも2012年を目処にゴールデンウイークの分散化を計画しているが、何しろ初めての試みでありこちらは反対意見も強い。例えば「帰省しても帰省先が休日でない」「会社の取引先が他地域の場合はどうする?」、さらには「遠距離恋愛や単身赴任家族は……」といった問題をどうすればいいのか。中央集権型社会の日本と地方分権の進んだドイツを直接比較することの難しさもある。
フランスは3分割
欧州のほかの国に目を向けると、例えば、EU(欧州連合)でドイツ(人口8200万人)に次ぐ人口を持つフランス(人口6500万人)も分散休日を取り入れている。ドイツと比べ中央集権の強いフランスの方が、何かと日本と比較しやすいと思うが、こちらは全国を3つに分割し、2月の2週間の休日と、4月の2週間の休日を1週間ずつずらしている(参照リンク)。
ただし、この連休はあくまで「学校カレンダー上の連休」であり「会社や役所も休みとなる法定の休日や祝日」とは異なる点に留意されたい。つまり、分散休日中も会社は営業し、役所は窓口を開けるというように、日本のゴールデンウイークとは内容が異なるということだ。就学年代の子どもがいる世帯はこの時期に休みを取らなければ旅行できないが、そうでない世帯はこの時期にこだわることなく自由に休みを取ることができる。
ドイツやフランスと、日本の休暇の取り方を比較すると、結局のところ「休暇の自由度」の問題に行き着く。ドイツやフランスのように一般労働者が(職場の事情が許す範囲内で)自由に1〜3週間の休暇をとることができるのが、先進国と呼ばれる国々の常識と言っていい。本来は日本もそうなってから休日分散化を考えるべきなのだが、いずれにしろゴールデンウイーク分散化の話題はさまざまな意味で日本人の休暇の取り方を再考する好機になるのではないだろうか。
ちなみにロイターと調査会社イプソスが世界24ヵ国の労働者の有給休暇消化率を調査したところ(参照リンク)、トップはフランス89%でドイツは75%。さらに中国65%、インド59%、米国57%などと続き、日本は断トツの最下位33%だった。豊かさとはいったい何なのか、つくづく考えさせられる数字である。
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