コラム
成果主義がうまくいかなかった最大の理由(2/2 ページ)
評価が良かったり悪かったりした結果が処遇差となって反映されるなら、競争が起こり、やる気や危機感が醸成されやすくなって、成果主義は当初の狙い通り機能したはずだ。しかし、なぜ機能しない例が多く見受けられるのだろうか。
評価結果が固定化する理由
ではなぜ、評価結果が固定化してしまっているのか。それは、「人材レベルに変化がないから」「能力や意識、意欲における個人差を放置してしまっているから」ではないかと考えます。それぞれの強みや弱みが、時間が経過しても変わらず放置されている状態。学ぶ機会も風土もなく、成長に乏しい状態。だから、評価の結果がいつも似たようなものになる。
だとすると、成果主義が機能しなかった理由は、育成とセットで処遇システムを導入・運用しなかったことではないかと考えます。配置換え、役割の見直し、研修、日ごろの指導などを通じた人材育成への取り組みを軽視したままなので、評価の良し悪しはいつも同じようなものとなり、結果として処遇格差が動機付けとして機能しなかったということです。
もちろん成果主義の導入当初は、より良い処遇を求めて各々が自主的に学び、成長しようとするのではないかという期待もありました。しかし、給与が何倍にもなったり、クビになったりするほどの差が付くわけではないので、そうはならなかった。
成果主義は日本にそぐわないのだとか、日本的成果主義とは何かとか、実は欧米は成果主義ではないのだ……とか、さまざまな議論が出ていますが、いずれも人事制度の範囲内の議論です。そうではなく、「人材育成の仕組みや注力度合いを変えずして、処遇システムだけ変えたことが問題ではなかったのか」というのが私の考えです。(川口雅裕)
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